「クオリティ(質)」は株式投資の流行語となっている。しかし、その言葉は実際に何を意味しているのだろうか?
不透明な世界の中で、投資家は質が高い保有銘柄やリターン・パターンを有する株式ポートフォリオをますます求めるようになっている。だが、ポートフォリオの質を確かめるのは、自動車やスマートフォンの品質を検査するようには進まない。
投資家は「クオリティ」について明確な定義を定めることで、株式ポートフォリオの中身を正確に評価できるようになり、その保有銘柄に耐久力があるかどうか判断することができる。その指針となり得る質問を挙げてみたい。
1. 株式ポートフォリオを運用するマネジャーの大半は、質の高い企業をターゲットにしていると言う。しかし、株式投資における「質」とは、実際に何を意味しているのだろうか?
辞書的な定義によると、質とは「卓越性の度合い」を意味する。問題は、この言葉が投資の分野で使われすぎており、どのように質の高いポートフォリオが構築され、顧客に提供しているのかが必ずしもはっきりしなくなっていることだ。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、ポートフォリオが本当に高い質を提供しているのか、それとも口先だけなのかを理解する上で役立ち得る、相互に関連する重要な考え方が2つあると考えている。第一に、質とは企業の業界内におけるビジネスモデルを説明する特性のことであり、第二に、質の高い銘柄を特定及び評価するために、さまざまな財務指標を活用することができる。
2. 質の高いビジネスモデルとはどのようなものか?
質の高いビジネスモデルにはいくつかの特徴がある。質の高いビジネスを展開する企業が持つ主な特性としては、競争上の優位性、価格決定力、革新性、経営手腕などが挙げられる。投資家は適切な質問を投げかけることで、長期にわたり持続できるとみられる質の高いファンダメンタルズを持つ企業を見つけ出すことができる(図表1)。質の高さに焦点を当てた投資アプローチは、インフレ、成長鈍化、地政学的リスクといった、今日の投資家が直面している3つの大きな課題にうまく対処できるポートフォリオを構築するのに役立つとABは考えている。

質の高い銘柄は特定のセクターや投資スタイルにしか存在しないという考えは、よくある誤解である。実際には、そうした銘柄はさまざまなセクターや業界で見つけ出すことができ、景気サイクルの影響を受けやすい企業もあれば、収益性の高い成長ドライバーを有する企業もある。
3. それぞれのポートフォリオは質をどう定義しているか?
銘柄の質を定義する方法は数多くある。異なる株式戦略は、ポートフォリオの投資哲学に沿って異なる指標やファクターを取り入れている(図表2)。

総資産利益率(ROA)や自己資本利益率(ROE)などの収益性に関する指標は、株式の潜在的なリターンの高さを示唆するケースが多い。投下資本利益率(ROIC)の高さは、資本を魅力的な再投資機会に配分し、企業の資本コストを上回る経済的利益を獲得することで、将来の成長につなげる優れた能力を経営陣が持っていることを示す証しとなる。フリーキャッシュフロー利回りなどのキャッシュフロー指標が良好なら、経営陣が配当を維持または増額したり、自社株買いを行ったり、戦略的買収を実施したりする選択肢を持っていることを意味する。この指標は、バリュー型のポートフォリオで多く使用されている。負債資本倍率は多くの株式戦略で使用されており、この指標が低ければ、その企業が過度に大きな負債や財務上の負担を抱えていないことを意味する。
4. ポートフォリオの運用チームはどのような方法で質の基準を満たす企業を見つけているのか?
質を定義することは、ポートフォリオの構築に向けた第一歩となる。長期的なリターンを生み出す可能性のある質の高い企業を見つけ出すには、規律あるリサーチ・プロセスが必要になる。ABの見方では、質の高い企業を探し出す上では、クオンツ分析とファンダメンタル分析を組み合わせることがとりわけ大きな効果を発揮する。
クオンツ分析は、膨大な数の銘柄の中から、一定の質的基準に基づくスコアが高い銘柄を選び出すために用いられる。業界に精通したファンダメンタル・アナリストは、企業のビジネスモデルを調査し、その企業が業界やセクターにおいて、長期的に安定した利益成長を実現できる備えができているかどうかを判断することができる。これら2つのアプローチを組み合わせることで、耐久力を持つ質の高い銘柄で構成する分散されたポートフォリオを構築することが可能になるだろう。
5. 景気サイクルの異なる段階において、質の高い企業はどんなパフォーマンスを示すのだろうか?
質の高い企業は景気サイクルのほとんどの段階でアウトパフォームする傾向があり、特に成長鈍化の局面やボラティリティが高まる局面で優れたパフォーマンスを上げるケースが多い(図表3)。こうした動きが起こっている場面では、投資家はフリーキャッシュフローが着実に拡大し、収益力があり、健全なバランスシートを持つ銘柄から得られる希少なプレミアムを追求する。マクロ経済環境が悪化している場面では、こうした銘柄を見つけ出すのは難しくなる。

だが、景気回復の初期段階では、質の高い銘柄のリターンは精彩を欠くものとなりがちだ。こうした時期には、「ゴミへの殺到(dash-to-trash)」と呼ばれる質の低い銘柄が急騰する現象がしばしば見られる。しかし、景気回復の初期段階ではどんな銘柄でも上昇する傾向がある(「上げ潮がすべての船を押し上げる」現象に似ている)ため、質の高い銘柄に投資していても必ずしも損失を被るわけではない。現在は景気回復の初期段階ではないとみられるため、質の高い銘柄の見通しは依然として明るいとABでは考えている。
質に関する特定の要因は、異なる市場環境で効果を発揮する可能性がある。なぜなら、質には、グロース、バリュー、高ボラティリティに対する低ボラティリティなどのファクターとの関わりについて、さまざまな特徴があるからだ。どのファクターが特定の戦略と関連しているかを把握すれば、市場の浮き沈みを通じたそれらのリターンのパターンが、投資家の期待に沿ったものとなる確率が高まることになる。
適切な定義が定められている場合には、運用チームは質の高い企業を見つけ出すために、実績で裏付けられた規律あるプロセスに従う必要がある。質の高い銘柄の発掘に真剣に取り組んでいるポートフォリオは、たとえ短期的なボラティリティやマクロ経済や政治に関する不確実性に直面しても、投資家の長期的な財務目標の達成に貢献することができるだろう。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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