4つの関連し合う指針が、将来有望な成長企業を見いだすための説得力ある投資哲学を形成している。
株式投資は学習プロセスであり、運用チームはそのなかで規律をしっかり守りながらも、常に変化をいとわない姿勢をとらなければならない。過去20年間における欧州及びグローバルの持続的成長株への投資から学んだことは以下の4つである。
長期リターンの真のけん引役を忘れない
株式投資の長期リターンの源泉は、基本的には利益とキャッシュフローである。
わかりきったことのように聞こえるかもしれないが、値動きが激しい市場ではこの基本を忘れてしまう場合が多い。長期的に見れば、MSCI欧州指数のパフォーマンスは構成銘柄の利益成長率と密接に連動している。そして、MSCI欧州グロース指数では構成銘柄の利益成長率が市場全体より高く、株式市場のパフォーマンスにおいてもなお一層高いリターンをあげている(図表)。これは、同時に市場全体より高い利益成長を実現する企業を見いだすことができる投資家は、その恩恵を受ける傾向があることを示唆している(以前の記事『欧州株式市場で見逃されている成長分野を見つけ出す』ご参照)。
そうした恩恵を受けるためには、ファンダメンタル分析でキャッシュフローを優先すべきだとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えている。なぜなら、キャッシュフローは企業が健全であるための生命線であり、長期的に利益が成長し続ける能力をバックアップしているためである。厳しいマクロ経済状況や地政学リスクによって市場のパフォーマンスが悪化した時でさえ、最終的には企業の利益成長のトレンドが株式の長期リターンをけん引するのだ。
遠い将来までを見据える
ABは株式のアクティブ運用マネジャーとして、最適な投資期間は最低5~10年だと考えている。
投資の将来を予想するという点において、5~10年はことのほか長く聞こえるかもしれない。しかし、ABはこのアプローチが投資家の強みになると考えている。このアプローチでは、企業の原動力に注目することが求められる。企業を取り巻く環境がどれほど不安定であろうと、原動力は利益成長見通しの確度を高めてくれるのだ。これまで以上に移り気な世界において、超長期的な視点を持つ投資家は、時間裁定と呼ばれるものから恩恵を受けることができる。つまり、短期的な不透明性を理由に特定の銘柄が市場で不当に売られた場合、長期的な利益成長見通しを固く信じて疑わない投資家は、ポジションを増やしたり、調整することができるのだ。
企業オーナーのように考える
株式投資家は多くの場合、将来いつ売却するかを念頭に置きながら株式を購入する。企業オーナーはそうではない。
オーナーは企業を発展させるために株式を取得するのであって、その企業に関与しなくなる日を念頭に置いてはいない。投資家がオーナーのような考え方をすれば、企業の製品・サービスの競争優位性、企業文化などの経営上の特性、それらが利益の持続可能性をどのように支えているかに注目するだろう。
投資家はそうすることにより、極めて異なる視点を持つようになる。基本的な企業の健全性が最優先だという視点である。そうした視点は、利益の成長に必要な要素から投資家の注目をそらしかねない市場の雑音を排除するのに役立つ。そして、欧州工業株など(以前の記事『欧州成長株:成長の源泉となる工業セクター』ご参照)、必ずしも成長ポテンシャルと結びつかないセクターや業界の企業に、投資家を導くこともある。
また、企業オーナーのアプローチでは、株式の保有期間が、ABの典型である5~10年よりさらに長くなる可能性がある。実際に、厳選した成功企業の株式は、ポートフォリオに15年または20年間保有する価値さえあるかもしれない。
短期的なボラティリティは長期的な投資機会をもたらす
戦略的かつ長期的な視点を持つ株式投資家は、短期的なボラティリティをうまく利用し、長期的に見れば回復する可能性が高い銘柄のポジションを増やすことができる。
市場にボラティリティが存在するのは厳然たる事実であり、最も優秀な運用マネジャーでさえ、ある時期には非常に厳しい四半期や1年を経験するだろう。当然ながら、景気後退局面やアンダーパフォームしている最中には不安になりうる。しかし、結論を急ぐ前に、ポートフォリオがアンダーパフォームしている理由を確認する必要がある。ポートフォリオの戦略や哲学を実施するにあたって運用チームが規律を守っている場合は、それを否定してはならない。ポートフォリオ・マネジャーが、戦略的かつ論理的な根拠がない流行などを追いかける方が、はるかに大きな問題である。
ポートフォリオ運用チームと密接な関係を築いている顧客は、市場のサイクルで繰り返される上げ下げを経てパートナーとなる。そうした顧客は、戦略が苦境に立たされた時も支持し続けるケースが多い。パフォーマンスが芳しくない期間がアクティブ運用戦略を台無しにすることはないと、彼らにはわかるだろう。優れたアクティブ運用マネジャーは、不安定な期間を通してあくまでも自身の戦略を実施し、複数年の投資期間ではなお一層高いパフォーマンスを実現できるとABは考える。
ABが長年の間に積み重ねてきたこれらの教訓はお互いに関連し合っている。長期リターンのけん引役を理解すれば、5~10年の利益成長見通しを作成するのが理にかなっている。それほど遠い将来までを自信を持って見据えるためには、企業オーナーの考え方が必要である。そしてその考え方を持てば、一時的な混乱期間をしのぐことがはるかに容易になる。まとめると、これらの教訓を念頭に置きながら戦略的な投資哲学を実践することで、投資家の長期的な目標を達成するポートフォリオを作り上げることができるとABは考えている。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
当資料は、2024年8月7日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。
「株式」カテゴリーの最新記事
株式市場の見通し:ボラティリティが高まるにつれ、反射的な衝動に抵抗する
市場環境は急速に変化している。しかし、株式ポートフォリオや資産配分を反射的に変更すると、逆効果になりかねない。 米国経済…
「株式」カテゴリーでよく読まれている記事
アライアンス・バーンスタインの運用サービス
アライアンス・バーンスタイン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/
- 加入協会
-
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
当資料についての重要情報
当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。
投資信託のリスクについて
アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。
お客様にご負担いただく費用
投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります
- 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
- 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
- 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。
その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。
ご注意
アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。