株式は、インフレヘッジや低成長の環境を乗り切るために、今日の分散投資では重要な役割を担っている。
債券利回りが上昇することで、株式投資家にとっては厳しい問題が生じている。株式のリスク・リターンのトレードオフは従来に比べれば 不利になったかもしれないが、過去のリターンのパターンを見る限り、米国株はこうした環境下でも好ましい結果をもたらすだろう。
どのような資産であれ、投資判断はリスク・リターンの関数である。株式投資家にとって、株式リスク・プレミアムはリスク・リターンのトレードオフを測る一般的な方法である。端的に言えば、株式リスク・プレミアムとは投資家がリスク・フリー・レート比で、どの程度の超過リターンが期待できるかを示す指標である。株式リスク・プレミアムは、一般的に債券や現金よりも高リスクな資産とみなされる株式への投資に対して、投資家が見込んだリターンを測るものである。株式リスク・プレミアムが高くなるほど、投資家にとってはそれが低い場合に比べ株式から相対的に高いリターンが期待できることを示しており、逆もまたしかりである。
今日の株式リスク・プレミアム低下は株式にとって悪いシグナルか
2023年、米国株の株式リスク・プレミアムは低下した。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の株式リスク・プレミアム測定基準は、S&P 500指数の益回りからリスク・フリー・レートの代わりとなる米国10年国債利回りを差し引いたものである。このスプレッドは2009年から2022年までの平均3.1%から、2023年10月末には1.2%ポイントにまで縮小した(米ドルベース)(図表1)。株式リスク・プレミアムが縮小したのは、金利上昇により国債利回りがほぼゼロ水準から10月末には4.9%にまで上昇したためである。
株式投資家にとっては懸念材料だろう。結局のところ、株式リスク・プレミアムは今後数年間、低下する可能性が高い。低インフレ、超低金利、そして世界金融危機から新型コロナウイルス感染拡大期まで続いた連邦準備制度理事会(FRB)による量的緩和策によって低水準に抑え込まれていた債券利回りが抑制されることはないためである。株式リスク・プレミアムがもっと高かった2009年から2022年まで、米国株の平均リターンは年率13.1%だった(米ドルベース)。ということは、この株式リスク・プレミアムの低下は株式投資家への警告サインなのだろうか。
必ずしもそうではない。過去にも株式リスク・プレミアムの低い時期があったが、株価は比較的堅調だった。例えば、1983年から2008年までの株式リスク・プレミアムも1.0%と低かった。しかし、その間のS&P 500指数のリターンは年率平均10.2%であった(米ドルベース)。だが、将来の地合いがこれまでと異なることはあり得ることであり、株式リスク・プレミアムが低くなれば株式投資に対するハードルは高くなる。しかしながら、債券利回りが上昇する局面でも、株式は堅実なリターンをもたらし得るというのが、歴史の教訓である。
ポートフォリオのインフレ対応力を高める株式投資
確かに、最近の5%に近い債券利回りは投資家にとって魅力的な水準であり、不安定な世界に安心感を与えるということは理解できる。しかし、今日の分散型投資ポートフォリオにおいては、株式と債券の両方が重要な役割を担っているとABでは考える。
とりわけ、株式はインフレに対する優れたヘッジ手段だとABでは見ている。ABのリサーチでは、1948年から2023年7-9月期までの米国の年間インフレ率は2%から4%と緩やかであったが、S&P 500指数は四半期当たり2.5%のリターンを上げている(米ドルベース)。これは確かな実質リターンであり、予想されているようにインフレが比較的高い水準で推移したとしても、株式投資への意義は保たれることになる。
株式はまた、配当の増加によってインカムの増加をもたらしてくれる。ABでは、フリー・キャッシュ・フロー(FCF)利回りを用いて株式インカムを測定している。FCF利回りは、企業が全ての営業コストを差し引いた後に生み出す余剰キャッシュを計算したものである。ABのリサーチでは、米国株のFCF利回りは今後とも上昇し、FRBの長期インフレ目標である2%を上回っていくものと見ている。
これは、最近人気の投資手段となっているキャッシュとは対照的である。現在、預金金利は非常に有利な水準にあるが、多くの投資家が予想するようにFRBが利下げに踏み切れば、それも長くは続かないであろう(図表2)。仮に利回りが低下した場合、キャッシュでの運用にこだわった投資家は、この先の配当増加や株価上昇の可能性を逃すことになりかねない。
ハードルが高いときこそ重要な選択眼
債券と株式は分散投資において両立させることは可能であり、またそうすべきである。実際、金利が今後も低下し続ければ、株式リスク・プレミアムは上昇し 、株式リターンに新たな弾みをつけるであろう。
当面、株式投資家にとっては、株式リスク・プレミアムが低い投資環境を乗り切るために、厳選投資が求められる。とりわけ重要なのは、安定した成長ポテンシャルやキャッシュフロー創出力の恩恵を受けながら、株価が妥当なバリュエーションで取引されている、強固なバランスシートを備えた質の高い企業を見いだすことである。このような企業を選び抜いて、アクティブ運用の株式ポートフォリオに組み入れることで、マクロ経済や市場の環境が厳しくなる中でも、株式投資家に強じんさと投資リターンのポテンシャルをもたらすであろう。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
オリジナルの英語版はこちら
本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
当資料は、2023年11月27日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。
「株式」カテゴリーの最新記事
株式市場の見通し:ボラティリティが高まるにつれ、反射的な衝動に抵抗する
市場環境は急速に変化している。しかし、株式ポートフォリオや資産配分を反射的に変更すると、逆効果になりかねない。 米国経済…
「株式」カテゴリーでよく読まれている記事
アライアンス・バーンスタインの運用サービス
アライアンス・バーンスタイン株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/
- 加入協会
-
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会
当資料についての重要情報
当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。
投資信託のリスクについて
アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。
お客様にご負担いただく費用
投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります
- 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
- 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
- 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。
その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。
上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。
ご注意
アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。