テクノロジー株は2022年になって急落し、一部の投資家はこのセクターの将来性を疑問視している。しかし、株価下落にもかかわらず、いくつかの分野では技術革新が新たな段階に入りつつあり、力強い成長に向かうとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考える。
 
テクノロジー株への投資は大きなマイナスとなっている。MSCIワールド指数に組み込まれているテクノロジー株は、2022年初から9月30日までに現地通貨ベースで33%近く下落した。米国では、テクノロジー株の比率が高いナスダック総合株価指数が同じ程度下げているほか、収益性の低いテクノロジー株はさらに激しい下げに見舞われた。テクノロジー株は過去数年にわたり着実に上昇してきたが、ここにきて投資家は試練に直面している。2022年の下落は、株価バリュエーションが実際の企業収益に沿った水準となるための調整なのだろうか?それとも、新型コロナウイルスのパンデミックによって消費者のテクノロジー利用が加速した後、成熟したこのセクターが大きく減速していることを反映しているのだろうか?または、それほど大きな成長余地がもはや残されていないのだろうか?
 
こうした疑問が生まれるのは避けられないが、それは的を射ていない。実際、テクノロジーの市場は変化しつつあり、イノベーションが広がりを見せ、新たに革新的な分野が生まれつつある。適切な分野で成長を追求する投資家は、魅力度の高い投資機会を見つけ出すことができるだろう。
 

イノベーション・カーブにどんな変化が生まれたか?

過去20年間、ブロードバンドとモビリティの普及がイノベーションをけん引してきた。2007年にiPhoneが発売されて以来、世界中で何十億人もの人々がモバイル機器を通じ、ネットサーフィンやショッピング、ゲームなどの新たな楽しみを手に入れた。その結果、ネットワークプロバイダー、半導体メーカー、携帯電話メーカーなど、モバイルのエコシステムを支える企業が大きく躍進した。
 
テクノロジーやニューメディア分野の巨大企業は爆発的な成長を遂げた。フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、グーグルはFAANGとして知られるようになり、2022年までは誰も成長を止められないように見えた高収益の巨大銘柄だった。
 
だが、これらの市場の一部は成熟している(図表1)。例えば、世界のスマートフォン普及率は100%を超え、出荷台数が鈍化している。ソーシャルメディアの急成長もピークを迎えつつあるかもしれない。確かに、過去10年間にわたるデジタル化の中核を担ってきた企業は、まだ成長が続く可能性がある。しかし、これらの企業は必要不可欠なサービスを提供する公益企業のようになり、収益性はすでにピークをつけた可能性がある。
 
 

 

次に何が起こるか?テクノロジー・インフラの変革

しかし、テクノロジーは死んでいない。それとは逆に、イノベーションがテクノロジー・インフラの変革を推進し、消費者行動の変化に伴って不可欠なものとなっている。デジタルの世界で生き残り、成功を収めたいと考えるすべての企業は、テクノロジー・インフラに戦略的に取り組む必要がある。その結果、たとえ経済環境が厳しくとも、先端的なインフラ技術への需要は持続するとABでは考える。
 
その理由は、これからの社会はデジタル技術に根ざしているからである。パンデミック以降のニューノーマルでは、企業は労働力の柔軟性や効率性を確保しなくてはならない。そのためには、ビジネス・アプリケーションやデータ管理ツールを活用し、迅速に作業をクラウドに移行する必要がある(図表2)。それには、速度が速く信頼性の高い処理やレスポンスを実現するクラウドインフラや、バーチャルな作業環境を守るサイバーセキュリティ・ツールへの支出拡大が必要になる。
 
 
 

 
 
企業が労働力や資源の不足によるコスト圧力に直面しているため、インフレもテクノロジー支出を押し上げる要因となっている(以前の記事 『インフレで不透明な道を革新的企業が切り開く』ご参照) 。地政学的な環境が変化する中、世界中の企業がサプライチェーンのぜい弱性を見直しており、業務を外部に委託せずに社内で処理する量をさらに増やしたり、エネルギー自立することを目指している。技術革新は多くの方法を通じてコスト圧力を緩和することができる。
 

次の大きな投資機会はどこにあるのか?

企業のタイプが違えば、必要な技術的ソリューションも異なる。しかし、いくつかの明確なトレンドがすでに鮮明に現れている。
 
ロボティクスが拡大している(図表3)。その現象が見られるのは、早くからそれを導入していた自動車業界やエレクトロニクス業界だけはない。ヘルスケアから農業、小売り、物流業界に至る多くの企業は、ロボティクスがこれまで以上に高速で驚異的な計算能力や、人間と同じような意思決定を行う人工知能の能力を通じ、効率性の向上とコスト削減を実現できると予想される。
 
 

 
 
 
人間と機械はモノのインターネット(IoT)を通じ、新たな方法でコミュニケーションをとっている。スマートで低価格のセンサーは、あらゆる機械、レジ、製品の相互接続を可能にし、人間と機械、そして機械同士のコミュニケーションを再構築している。それは「インターネット・オブ・エブリシングス」(インターネットですべてをつなぐ)を生み出し、製造と輸送の未来を定義し直すものであり、商業的にも大きな可能性を秘めている。
 
一方、エネルギー自立を目指す世界的な取り組みも、テクノロジーに依存している。イノベーションは、太陽光発電や風力発電、そして電気自動車の経済性を高めると思われる。エネルギーの生成、貯蔵、管理には、いずれもテクノロジーによるソリューションが必要になる。
 
これらに共通しているのは何だろうか?第一に、新たなイノベーションの波は、成長している持続的なニーズに取り組んでいるため、経済的なストレスを乗り切ることができそうだ。第二に、技術革新を可能にする企業はまだ成熟しておらず、市場の多くの分野ではリーダーとなる企業が定まっていない。市場の歴史に詳しい人なら、伝説的な企業や先導的企業が常に入れ替わってきたことを思い起こすに違いない。1970年代のニフティ・フィフティ(人気を集めた50銘柄)から1990年代の「四騎士(マイクロソフト、デル、シスコ、インテル)」、そしてFAANGに至るまで、特にテクノロジー分野においては、それは正常なリーダーシップの交代プロセスである。
 
株式投資家は、2022年のテクノロジー・セクターの下落におじけづいてはならない。テクノロジー企業の株価は、1年前に比べてバリュエーションがはるかに魅力的な水準にあり、安定したビジネスモデルを持つ銘柄にとっては魅力的な買い場が生まれている。今こそ、世界の産業界を変革し、その過程で強力な株式リターンを実現する可能性を秘めた、次世代の革新的なテクノロジー・リーダーを見極めるべき時である。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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