インフレが猛威をふるい、ウクライナ情勢も収束の見通しが立たない中、世界経済の減速は避けがたい。こうした低成長の環境下でグロース株に投資するには、逆風を乗り越える利益成長力を持った企業を見極めることがカギとなる。
 
現在、株式市場では難題が山積みとなっている。ロシアによるウクライナ侵攻がインフレの火に油を注いでいることから、多くの中央銀行が金融政策の引き締めによって消火活動に取り組んでいる。世界経済はまだコロナ禍からの回復途上でぜい弱性が残っているため、こうした金融政策が成長率鈍化やスタグフレーション、またはもっと悪い事態につながりかねないとの警戒感が高まっている。
 
株価下落は多くの業種にわたっている。そして、株価の下落率が企業業績予想の低下率をはるかに上回るケースも多く見られる。例えば、MSCI ワールド指数の情報技術セクターは年初来21.3%下落しているが、同セクター構成銘柄の利益予想はむしろ3.5%上方修正されているため(2022年4月末現在)、両者のかい離は24.8%ポイントに達する(図表)。一般消費財・サービス・セクターでも、このかい離は19.6%ポイントに達した。
 
 
株価の下落は行き過ぎか?.png
 
 
そうは言っても、グロース株の多いセクターはまだ割高感があるのではないだろうか?確かに、テクノロジーや一般消費財・サービスなどのセクターは、2022年4月末時点の株価予想収益率がそれぞれ23.4倍と20.4倍となっており、特に割安だとは言えない。また、金利上昇は一般的にグロース株の株価バリュエーションにとってマイナス要因だ。しかし、株価の下落幅が利益予想の下方修正率と大きくかい離していることは、足元で市場のボラティリティが上昇する中で一部の銘柄が不当に売り込まれている可能性を示唆している。利益見通しが底堅く、かつ株価バリュエーションも割安な企業を見極めるために、アクティブ運用を行う投資家が持つべき視点を以下に挙げてみる。
 

独自の成長力がある企業を見つける

現状、景気サイクルに依存した成長はあまり当てにできない。また、中国が今後も世界経済の成長の原動力となるかについても、新型コロナウイルス感染拡大に伴う厳格なロックダウンを受けて疑問が浮上している。しかし、経済成長の鈍化の影響を受けにくい企業も数多くあり、中でも息の長い構造的な事業成長の恩恵を受ける企業は、景気悪化などの外部要因に対する抵抗力が強い。
 
例えば、情報技術セクターのクラウド関連ビジネスを思い浮かべていただきたい。世界中で、あらゆる業種の企業がクラウドにデータを移行させている。人件費が上昇し、またセキュリティを巡る懸念が高まるなか、クラウドのニーズはますます拡大しており、このトレンドは景気減速による影響も受けにくいと見られる。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見立てでは、クラウドへの移行に不可欠なマイクロソフトなどの企業は、こうした変化の恩恵を受ける公算が高い。
 

コロナ後の成長分野を見極める

旅行、娯楽、小売といった産業は、コロナ禍によって抑圧されてたまっていた需要に押し上げられる公算がとりわけ高い。例えば、ケータリング会社は、パンデミックによる企業や教育機関の閉鎖やスポーツ・イベントなどの中止を受け、多くの契約を失い大きな打撃を受けた。しかし、人々がオフィスに戻り、またライブ・イベントに行く人が再び増える中、ケータリング・サービスの需要は拡大しつつある。英国に本拠を置くコンパス・グループなどがこうした動向の恩恵を受けると見込まれる。
 

レバレッジを避ける

金利が上昇すると同時に経済成長が減速する場合、債務比率の高い企業はぜい弱性を露呈する可能性がある。ここ数年の低金利環境における借入コストの異常な低さを背景に、多くの企業が借入れを増やしてきた。しかし、金融環境が正常化に向かう中、健全な財務が再び重視され始めている。力強い成長力と健全な債務比率という条件が備わった企業の株価にはプレミアムが付く可能性がある。
 

経営陣を精査する

厳しいマクロ経済環境が企業に次々と経営上の課題をもたらすため、適切な戦略的判断ができる経営者の存在は極めて重要となる。
 
Pets.comを覚えているだろうか?1990年代後半、企業が新規株式公開(IPO)で調達した資金をブランド確立のための宣伝に浪費していた時代の放漫経営の代表例である。この数年の余剰資金のだぶつきを受け、当時と同じような問題が生じることへの懸念がくすぶり続けている。例えばバイオテクノロジー業界では、一部の小規模な臨床試験会社に関し、資金枯渇への懸念が株価を圧迫している。しかし、質の高い経営陣はPets.comのようにビジネスの流行に振り回されない。例えば、ライフサイエンス企業にデータ分析サービスを提供するIQVIAホールディングスを見てみよう。同社の最高経営責任者は先日、新しい取引先を受け入れるに際しては事業の収益性などを細かく調査し選別するという方針を示した。今日の難しいマクロ環境において成功するには、経営陣が規律正しく持続可能な事業運営にコミットすることが不可欠である。
 
こうした指針に従うことは、景気など外部要因の悪化による圧力に耐え得るビジネスモデルや競争力を持った企業を特定するために役立つ。現在高収益を上げていて、その収益力を維持できる企業は、金利上昇の影響に耐えられる可能性が高い。高成長企業は遠い将来のキャッシュフローがより多く株価に織り込まれているため、金利上昇が株価の逆風となりがちだが、ボラティリティが落ち着き、市場の関心がファンダメンタルズに戻れば、評価されるべき成長力を持つ企業はしかるべく評価されるようになるであろう。
  

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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