ヘルスケア・セクターは長らく、株式市場が不安定化した場面で最も信頼できるディフェンシブなセクターの1つだとみなされてきた。なぜなら、病院、製薬会社、医療機器メーカーをはじめとするさまざまなヘルスケア関連企業は、好不況にかかわらず、消費者の需要が安定しているからだ。
 
だが、2022年上半期に困難な局面に直面したことを受け、ヘルスケア・セクターのディフェンシブな特性が疑問視されている。それでも、相対的に見れば、ヘルスケア・セクターは市場全体をアウトパフォームしており、2022年は6月30日時点でMSCIワールド指数が米ドルベースで20.5%下落したのに対し、MSCIワールド・ヘルスケア指数は10.3%下落しただけで、一貫して下値リスクが抑えられるパターンが続いた。実際、2000年以降、ヘルスケア・セクターは世界の株式が下落したすべての年において市場全体をアウトパフォームしてきた(図表1)。
 
ヘルスケア銘柄は下落局面で一貫して市場全体をアウトパフォームしてきた.png

 
 

今日のヘルスケア・セクターはディフェンシブと
オポチュニスティックな性格を兼ね合わせている

ヘルスケア・セクターのディフェンシブな能力に変わりはないが、セクターを構成する企業の性格は変化している。例えば、2000年時点ではセクター全体の82%を医薬品が占めていたが、2021年末にはその比率が38%に低下した。一方、バイオテクノロジー、機器、消耗品のウェイトは3倍近くに拡大した(図表2)。ヘルスケア業界の変化は、市場の力が当該セクターの短期的なパフォーマンスに対する影響の及ぼし方を大きく変えたばかりでなく、アクティブな投資家にとって投資機会が拡大することになった。
 
今日のヘルスケア・セクターの姿は以前とは大きく異なる.png
 
例えば、最近の市場の下落は、グロース株に対する激しい売りが主因である。今やヘルスケア・セクターの指数で大きなウェイトを占めるようになった小型のバイオテクノロジー企業は、この下落に巻き込まれている。そうした理由から、バイオテクノロジー企業、またはヘルスケア・セクター全体の中から、個々の企業の違いを見分けることが重要になる。その目的は、嵐を乗り切る強さを持った企業と、そうではない企業を分別することにある。
 
現在のヘルスケア・セクターに大きな影響力を与えるバイオテクノロジー企業は、ヘルスケア投資においてアクティブ運用の綿密な銘柄選択が非常に重要である理由を明確に示している。バイオテクノロジー企業のリターンはかなり不安定になりがちだが、その理由は、多くの投資家がこれらの企業の成長見通しを検討する上で、開発中の新薬や治療法に関する臨床試験の成功に依存し過ぎているからである。バイオメドトラッカーによれば、新薬のうち第2段階の試験に進むのはわずか半数で、規制当局から完全な承認を得られるのは8%に過ぎない。そうしたリスクを踏まえれば、この分野では、よりファンダメンタルズに基づくアプローチが必要となる。一方、バイオテクノロジー業界には多種多様な企業が存在しており、多くの異なる業界に製品やサービスを提供するという、比較的安定したビジネスモデルを持っている企業もある。例えば、ペプチド(複数のアミノ酸が結合した化合物)を製造するバチェム・ホールディングスは、長期的な医薬品の研究ニーズに幅広く対応している。
 

成功は画期的な医薬品の開発よりも、
ファンダメンタルズにかかっている

アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、ヘルスケア投資における長期的な成長の鍵は、その背後にある科学ではなく、企業のビジネスモデルに注目することだと考えている(以前の動画『A Healthier Approach to Healthcare Companies』(英語)ご参照)。好ましい成果は、予想や推測よりも、調査と分析から生まれる。つまり資本リターンが高く(または改善しており)、将来の利益成長のためにしっかりと 再投資を行っており、質が高く株価水準が妥当なヘルスケア企業やヘルスケア関連企業に注目するべきだと考える。例えば、ヴィーバ・システムズはヘルスケア・システム全体のコスト削減を支援する収益性の高いクラウドプロバイダーで、ゾエティスはペットや家畜向けの医薬品を開発している。医療保険会社のエレバンス・ヘルスやユナイテッド・ヘルス・グループのように、バリュー型の伝統的なヘルスケア企業の一部も、患者の予後改善や経費管理を促し、収益拡大を続けており、魅力的な投資機会を提供することができる。
 
インフレ、利上げ、景気後退懸念などを背景に、2022年は大半の株式投資家にとって厳しい環境が継続する可能性もある。不安定な市場の動きが続いた場合、下値を抑える対策は常に有効であり、リターンを下支えする上で歴史的に信頼できる役割を果たしてきたヘルスケア銘柄がその1つになるとABでは考える。このセクターは20年前とは様相が異なるが、リターンに貢献するという事実は以前と変わらない。ヘルスケア分野で主流となっているダイナミックな製品やサービスは、一部の銘柄が厳しい経済環境を乗り切り、長期的なリターンをもたらす要因になるとABは考える。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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