自然言語処理を用いれば、環境・社会・ガバナンス(ESG)に関するネガティブな動向に関し早い段階から警戒シグナルを得られる。

人工知能(AI)に関する話題が世界を席巻しているが、それには理由がある。AIはありふれた作業を自動化し、業務効率を改善し、人間の意思決定を助けてくれる。

こうした恩恵は投資の世界にも及ぶ。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、自然言語処理(NLP)のような強力なAIツールは、例えばESGに関するネガティブな動向がニュースとして広く拡散される前に警告を発することで、アクティブ運用のパフォーマンス改善に役立つと考えている。

不祥事が投資に与える影響

原油や化学物質の流出といった環境災害、あるいは児童労働のような社会問題や、経営陣による不正行為などのガバナンス問題といったESGに関するネガティブなニュースは、企業の評判を著しく損ない、投資家の信頼を失墜させ、企業業績を悪化させる可能性がある。

ABのリサーチによれば、ESGに関するポジティブなニュースは当該企業の株式のリターンを押し上げる効果が見られたが、ESGに関するネガティブなニュースではまったくその逆であった。さらに、ネガティブなニュースに見舞われた企業の株価は、ニュースが出た初日だけではなく、その後数週間にわたり同業他社をアンダーパフォームしている(図表)。2022年9月から2024年5月にかけて、ネガティブなESGニュースに関連した銘柄は報道後10日間のリターンが年率換算で-7.3%(債券は-1.2%)となったが、これに対しポジティブなESGニュースに関連した銘柄の10日間のリターンは年率換算6.2%(債券は0.2%)であった。

自然言語処理がゲーム・チェンジャーに

ポートフォリオ・マネジャーが各企業のESGに関する問題や優位性を他の投資家よりも早く発見できれば、パフォーマンスに関し優位に立つことができるのは明らかだ。しかし、それは言うは易く行うは難しである。手作業で山のような企業の開示資料やニュース記事を読み捌くのは、面倒で時間がかかる。それを毎日繰り返すのはたいへんな作業だ。

そこでNLP技術の出番となる。

NLPは、アルゴリズムが人間のコミュニケーションを理解し、解釈し、生成することを可能にするAIの一分野である。NLPのアプリケーションは1950年代に登場して以来劇的に進化しており、単に「ありがとう」というフレーズを認識して「どういたしまして」と返答したり、テキスト中の特定の単語の出現回数を数えたりといった単純なパターン・マッチングから、今日では深層学習や文脈理解を含むより高度な技術へと進歩している。

その結果、膨大な量の生データを迅速かつ効率的に処理・分析する力を備え、微妙なニュアンスも含めて正確に人間の言葉を理解し生成できるテクノロジーとして活用され始めている。

NLPを用いたESG警戒システム

ABでは、ファンダメンタル分析を補完する強力なNLPツールを導入している。最新の大規模言語モデルを組み込んだこのツールは、何千もの企業の報告書やニュース記事に目を通すというたいへんな作業を、効率的で付加価値の高いプロセスへと変え、マテリアルなESG問題をリアルタイムで検出することを可能にしている。

このツールは世界中の企業をモニタリングし、現代奴隷、児童労働、差別、税務スキャンダル、不正役員報酬、汚職など、幅広いトピックにわたる問題について、複数の言語で世界各地のニュースをスクリーニングしている。さらに、このツールは柔軟に規模を拡大できるため、数百社に及ぶ企業に関するESG問題の萌芽を同時にスクリーニングし、ネガティブなニュースが市場に影響を与える前にタイムリーな警戒シグナルを提供する。

このツールは、各企業のESG問題を巡る市場や社会の見方を判断するために、金融専門用語を理解し、ESGに関する専門知識のトレーニングも受け、ニュースのトーンや文脈を評価することができる。そうした能力を用いて、ニュース源から関連情報を抽出し、要約を作成し、アナリストが分析するために最も重要と思われる事項をハイライトする。また、元記事等へのリンクも示すため、アナリストは迅速に情報を確認することができる。

このNLPツールは、例えば中南米で操業している大手鉱山会社が従業員や地域住民に対する劣悪な処遇を巡って当局から訴訟を起こさていることを警告した。結局、その会社は現地での採掘許可を取り消され、100億米ドル近くを投資したプロジェクトの操業継続を断念せざるを得なくなった。ツールは、政府による懲罰的な措置に先駆けて、ABの運用担当者にこうしたリスクを警告していた。

総合判断にNLPツールが統合されるのは必然

もちろん、AIやその他のツールは強固なファンダメンタルズ分析の代用にはならない。ESGに関してネガティブなニュースがあっても、必ずしもその企業に投資しないというわけではない。なぜなら、そのニュースは、許容できる範囲内のリスクであったり、すでに株価バリュエーションに織り込まれているリスクであったりすることもあるからだ。

NLPが発する警告を含む関連データを大局的な観点から評価するのは今も昔も運用チームの人間だ。結局のところ、NLPツールはあくまでも企業について十分な情報に基づいた判断を下すためのファンダメンタル分析におけるリソースの一つにすぎない。ただし、そうした分析を効率的に行う上で極めて重要な役割を果たすようになってきている。。

そして、NLPのおかげでアナリストやポートフォリオ・マネジャーは、データを探したり加工したりといった作業に割く時間を減らし、データについて深く、多面的に考えることに費やす時間を増やすことに役立っている。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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