成長がより多くの地域に広がるのに伴い、さまざまな国や資産への投資機会が拡大している。
2024年は世界経済の成長率やインフレ率が徐々に正常な水準に近づき、多くの地域で中央銀行が金融緩和に着手した。現在は先進国の大半でインフレ率が2~3%で推移しており、過去数年に比べ大幅に改善している。
株価はこうした環境の下で大幅に上昇し(以前の記事『2025年の株式市場見通し:米新政権の政策に揺れる市場で変化の波を捉えるには』ご参照)、2024年末にかけて不安定な動きを示したものの、過去最高値圏に達している。株価が高騰した一握りのテクノロジー企業が依然として市場をけん引しているが、業績見通しの改善は、2025年には他のセクターも株価が押し上げられる可能性があることを示唆している。政策金利は低下しているが、経済の底堅さや米国の新たな政策がインフレをあおりかねないとの懸念から、長期債の利回りは依然として高水準にある(以前の記事『2025年の債券市場見通し: 肥沃な土壌』ご参照)。
特に株式をはじめとするリスク資産については、おおむね良好な環境が続くとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では考えている。また、実質利回りが数年来の高水準にある債券にも長期的な投資価値があると思われる。米国の関税や移民政策が変更される可能性は、インフレ率が低下すると考えるABの見通しにとってリスク要因となるが、高水準にある借り入れ金利は、インフレにつながるそうした政策の推進に歯止めをかける要因となりそうだ。例えば、2017年末(1期目のトランプ政権が関税を引き上げる前)には、米国のインフレ率は1.5%、政策金利は1.75%だったが、現在ではそれぞれ2.8%、4.5%に上昇している。
各地域の成長ペースは収れんに向かい始める
新型コロナウイルスのパンデミック期間の極端な経済環境は姿を消し、安定した予測可能な環境が生まれており、まったく予想できないような動きも少なくなっている(図表1の左図)。ABでは、世界の経済成長は改善し、2025年には少しずつ長期的な平均に近づくとみている。米国の成長ペースはトレンドを上回る水準から鈍化する見込みだが、欧州や日本など他の先進国は、トレンドを下回る成長が若干改善すると予想される(図表1の右図)。中国では、財政支援策が持続的な逆風を和らげる効果はわずかしか期待できず、今後も緩やかな減速が続きそうだ。
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消費者は、各国の成長ペースを持続的に収れんさせる上で重要な役割を果たしている。米国では生産性の力強い拡大を受けて実質賃金が上昇したため、家計消費は過去5年間の大半を通じて堅調に推移した(図表2の左図)。米国以外の地域では生産性の伸びは弱く、実質賃金と購買力は低迷していた。しかし、最近は米国以外でも生産性の伸びが上向いており、実質賃金を押し上げる可能性がある。さらに、欧州やオーストラリアなど他の地域では変動金利型住宅ローン比率が高く、英国では所得に占める金利支払いの割合が3%に達しており(図表2の中央図)、米国と比べて購買力が落ち込んでいたが、金利が安定または低下するのに伴い、その逆風も弱まりそうだ。
労働市場はここ数年に比べひっ迫感が薄れており、先進国全体の求人数は、緩やかな景気拡大とおおむね合致した動きを示している(図表2の右図)。これらを総合的に考えれば、家計消費は世界的に消費を押し上げる方向で収れんに向かうとABでは予想している。
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企業業績は世界的に拡大する兆しが現れているが、企業の投資はまちまち
米国企業の景況感は力強く回復し、設備投資意欲も上向いている。米国以外では投資の伸びが鈍化しているが、テクノロジー向け支出が主導する米国における回復が世界的な鈍化傾向を和らげている。2025年には、世界の設備投資の伸び率は1桁台前半~半ばになるとABでは予想している(図表3の左図)。米国企業のキャッシュ創出力が全般的に高いこと(図表3の右図)や、大手テクノロジー企業の間で人工知能(AI)のニーズが引き続き高まっていることを踏まえれば、米国と他の国々との設備投資規模の格差は今後も続く可能性が高い。
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米国の政策や財政赤字が不透明感を増幅
いくつかの不透明要因があることを踏まえれば、見通しが変わる可能性も当然ある。ABは米国のトランプ政権が打ち出す政策を注視しており(以前の記事『米国大統領選挙の結果が欧州に及ぼす影響とは?』ご参照)、米連邦準備制度理事会(FRB)はすでに新たな政策を受けて見通しを若干修正している。輸入関税の引き上げや移民対策の強化は、短期的に米国のインフレ率を押し上げ、世界経済の成長を圧迫する可能性がある。そうした政策の規模や範囲、実行ペースが明らかになるまで、それがもたらす最終的な影響を評価するのは難しい。また、サプライチェーンを再調整するのか、価格上昇分を顧客に転嫁するのか、それとも自社で吸収するのかといった企業の対応についても見極める必要がある。それでも、政治家がすでに高い水準にあるインフレ率や金利をさらに押し上げたくないと考える可能性を考慮すると、政策の余地は限られているとABではみている。
財政の持続可能性に対する懸念が高まっていることから、米国のほか、英国やフランス、ドイツなどの先進国では財政政策が制約を受けそうだ。そのため、政府支出が成長やインフレに大きな影響を及ぼすとは考えにくい。
マルチアセット戦略の投資機会が拡大
2025年はより多くの市場で景気が拡大し、マルチアセット投資家にとって投資機会が広がるとABでは予想している。経済成長は企業業績の伸びを支え、それは株式などのリスク資産にとって追い風となることが多い。
先進国の株式市場では、米国、ユーロ圏、日本へのエクスポージャーが望ましいとABでは考えている。それとは対照的に、中国の成長に対する逆風が続いているため、新興国市場は依然として困難に直面している。中国では経済のリバランスに向けた政府の支援策は今のところ期待外れで、貿易障壁が高まる可能性によって問題はさらに深刻化する恐れがある。
ソブリン債は長期的な価値を提供
実質利回りが過去最高に近い水準にあることを踏まえれば、債券は短期的な不透明感があるものの、長期的な投資価値があるとABは考えている。年初の利回りが高いため、魅力的なインカム収入が得られる可能性もある(以前の記事『2025年のマルチアセット・インカム見通し:広がる投資機会』ご参照)。ABでは現時点において、他のソブリン債に比べ利回りの低下余地が大きいとみられる英国とドイツのソブリン債を選好している。
社債の信用スプレッドは現在、堅実なファンダメンタルズと経済の底堅さを背景に、歴史的にみてタイトな水準にある。こうした環境においては、株式のリターン・リスク・バランスが好ましいとの見方から、焦点をやや株式にシフトすることが理にかなっているとABでは考えている。
結論としては、米国の経済成長は他国を上回る伸びが続く見込みだが、先進国全体では徐々に収れんしていくとABでは予想している。しかし、一部の地域、特に輸出国は米国の政策変更による影響を受けやすいことに変わりはない。ABの見方では、こうした状況はマルチアセット投資家にとって、環境の変化に応じて柔軟かつ選別的に行動することの重要性が高まっていることを意味している。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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