2025年はインカムを重視する投資家にとって投資機会が拡大するが、下半期については不透明感が強いため、ダイナミックなアプローチが必要になるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ではみている。
2024年は世界的にインフレ率が中央銀行の目標値に向けて徐々に低下し、長く待ち望まれていた政策金利引き下げへの扉が開かれた。株式は予想を上回る成長に支えられ(以前の記事『2025年の株式市場見通し:米新政権の政策に揺れる市場で変化の波を捉えるには』ご参照※リリース後にリンク追加)、株価が高騰した少数の米国株がけん引する形で好調なパフォーマンスを上げた。債券セクターではスプレッドの縮小と魅力的なキャリーを背景に、クレジットが注目を集めた(以前の記事『2025年の債券市場見通し: 肥沃な土壌』ご参照)。一方、国債市場は不安定な動きが続いた。金融緩和が開始されたにもかかわらず、予想外の成長加速や米国の財政支出が拡大する可能性が懸念され、長期債の利回りが上昇した。
短期的にはこうした環境が持続し、引き続きマルチアセット・インカム戦略を支える要因となりそうだ。しかし、地政学的な緊張の高まりや、米国のトランプ新政権の政策が読みにくいことを背景に将来に関する不透明感が高まっているため、状況を注視していく必要がある。
世界は米国の新たな政策の行方に身構え
2024年の米国経済は力強い消費、賃金上昇、好調なサービス部門に支えられ、年間を通じてファンダメンタルズが堅調に推移した。外的ショックがない限り、2025年初頭にこの勢いが反転する理由は見当たらない。だが下半期については、不確実性が高まるとABではみている。
米国の大統領選挙と連邦議会選挙ですべて共和党が勝利を収めたことで、2つのシナリオが考えられる。1つは、減税や主要産業における規制緩和によって生産性や国内総生産(GDP)が押し上げられる可能性があることで、もう1つは、貿易や移民に関して提案されている政策が、スタグフレーションのような色彩を強めるリスクがあることだ。
トランプ氏が最初に大統領に当選した2016年の出来事はある程度参考になるが、今のマクロ経済や市場の状況は、当時とは大きく異なっている。例えば、資本市場のバリュエーションは押し上げられ、財政面の余裕も少なくなっている(図表1)。
2025年に何が起こるかは分からないが、はっきりしていることが1つある。それは、「米国例外主義」は今後も続き、米国の経済や金融政策の他地域との分断がさらに拡大する可能性が高い。
2025年の市場環境はリスク資産を支えるが、選別がカギを握る
2025年は適度な経済成長、インフレ率の低下、金融政策の正常化が予想される。こうした市場環境は、国債のほか、株式やクレジットなどのリスク資産を支える役割を果たすと思われる。これらの資産はいずれもマルチアセット・インカム戦略の柱となっている。
しかし、株式とクレジットの市場はここ数年間に力強く上昇してきたため、多くの資産価格が適正水準に達しているとABは考えている。それは、市場のボラティリティがもたらす影響を増幅させる可能性があるため、これまで以上に選別的なアプローチが重要になる。
米国株は最も魅力的に見えるが、視野を広げる方が望ましい
景気が持ちこたえている限り、株式はさらに上昇する余地があるとABでは考える。現時点では、米国企業には他の先進国市場に比べ、多くの投資機会があるようだ。米国株のバリュエーションは割高な水準にあるが、人工知能(AI)開発の継続、利益の拡大、規制が緩和される可能性などが追い風になると予想される。しかも、米国株は景気後退期を除き、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げした後に良好なパフォーマンスを示してきた(図表2)。
米国株は世界の株式市場をアウトパフォームし、利益を拡大できる米企業のすそ野はさらに広がるとABでは予想している。いわゆる「マグニフィセント7」(アルファベット(グーグル)、アマゾン・ドット・コム、アップル、メタ・プラットフォームズ、マイクロソフト、エヌビディア、テスラ)の利益成長は引き続き他社を上回る見込みだが、2025年には他の銘柄との格差が縮小し、過去7年間で最も小さくなると予想される(図表3)。
こうした市場の株価形成のすそ野の広がりは、特に高配当株や低ボラティリティ株といったバリュエーションが好ましい銘柄を含め、株式市場全体に分散投資するマルチアセット・インカム戦略に恩恵をもたらしそうだ。
より戦術的な観点では、米国の小型株に魅力的な投資機会があるとABでは考えている(以前の記事『US Election Could Create a Small-Cap Opportunity for Multi-Asset Investors』(英語)ご参照)。小規模企業は国内市場を中心に事業を展開する傾向にあるため、米国第一主義を掲げるトランプ政権の政策や予想される法人税減税により、他の企業よりもかなり大きな恩恵を受ける可能性がある。また、小型株は一般的にバランスシートの負債比率が高いため、金利が正常化するのに伴いさらなる追い風を受ける可能性がある。
債券投資では質の高い銘柄を重視する
信用スプレッドは過去に比べ小さいように見えるが、利回り水準は依然として非常に魅力的である。質の高い投資適格債券はマルチアセット戦略に「最適な」インカムを提供しており、利回りが大幅に低下しなくとも着実なトータル・リターンを創出できる可能性がある(図表4)。
投資適格債はリスク管理の観点からも魅力的だとABは考えている。ハードランディングはABの基本シナリオではないが、そうなればスプレッド拡大によるマイナス効果よりも利回りの低下によるプラス効果の方が大きくなるとみられるため、投資適格債は良好なパフォーマンスを上げると予想される。
企業のファンダメンタルズはおおむね健全で、ABの見解では、信用の質が2025年に大幅に悪化するとは考えにくい。スプレッドはタイトな水準にあるが、歴史的に見れば当面はタイトな水準を維持できる見通しで、キャッシュ金利の低下が続く中で、投資家の需要がさらなる追い風となる可能性がある。
デュレーションを延長しながらも、イールドカーブのスティープ化に備えたポジションを構築する
2025年にはデュレーション(金利リスクに対する感応度)を長期化することも賢明だとABは考えている。これは一般的に、国債へのエクスポージャーを引き上げることによって実現できる。しかも、米国の10年国債利回りは2022年以来初めて3カ月物キャッシュレート(米国の3カ月物国債利回り)を上回っており、投資タイミングとしても魅力的だ。
利回りはおおむね低下する見込みだが、米国の財政赤字の拡大やインフレ率の上昇に対する市場の懸念により、長期債の利回りは長期にわたって高止まりする可能性がある。また、緩和サイクルにおいてはイールドカーブがスティープ化する傾向があるため、現時点では、短~中期(2~10年)ゾーンの方がリスクとリターンのバランスが好ましいとABではみている。
総合的に考えれば、米国市場はより強力な経済環境、規制緩和、トランプ政権が企業に友好的な政策を取る可能性を支えに、世界の市場をリードする役割を維持できるとABでは予想する。株式のバリュエーションは2021年の水準に戻ったが、債券の利回りはより妥当な水準にあり、さらなる緩和策が講じられても、その影響を十分に吸収することができる。
また、株式と債券の相関関係は薄れる見通しだ。その結果、両者の補完的な関係が強まり、マルチアセット・インカム戦略のリスク調整後リターンを支える要因となりそうだ。資産クラス内のスタイル、セクター、ファクターにわたる分散も重要な意味を持つ。特に、2025年にスタグフレーションのリスクが高まる場合には、なおのことそう言える。
ABの見方では、マルチアセット・インカム戦略にとっては利回りと価格上昇余地の双方を生み出す環境は引き続き魅力的であるとともに、2025年は投資機会が広がる中で、これまでと同様に、柔軟かつダイナミックなアプローチが重要な役割を果たすことになりそうだ。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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