消費者の健全性を確認する良いタイミングである。

米国の消費者に何が起こっているのか? これは常に投資家の念頭にあり、投げ掛けやすい疑問だが、さまざまなニュアンスを含んでいる。強弱が入り混じったシグナルが現れるクレジット・サイクルの終盤には、特にそう言える。コロナ禍に絡んで生じたゆがみがなかなか解消せず、消費者の健全性をしっかり把握することがなお一層難しくなっている。しかし、効率的に投資するためには、きちんと把握することが非常に重要である。

弱気のシグナルも見られるが、広範囲にわたる弱さではない

消費者のファンダメンタルズやマクロ経済の動向を概観すると、強弱が入り混じっている。弱気のシグナルは数多くある。労働市場には減速の兆しが見受けられる。多くの生活必需品で価格が高止まりしている。貯蓄率が低下し、一方では延滞率が上昇している。さらには高金利が、さまざまな形態の債務を抱える消費者の足かせになり始めている。 

しかし、消費者が保守的に行動している可能性があると同時に、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、ファンダメンタルズに広範囲にわたる弱さがあるとは認識していない(以前の記事『米国消費動向に変化?保守化傾向は見られるが、大幅減速には至らず』ご参照)。失業率が歴史的な基準からすれば低水準にとどまるなかで、家計債務の伸び率が鈍化し、純資産が増加している。そして、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが実施され、それによって借入コストが下がる可能性がある。 

その上、融資基準がこの2年間にわたって厳しくなっている。延滞率が上昇しているのは確かだが、歴史的な低水準からABが通常に近いと考える水準に上昇しているにすぎない。ABの見解では、ほとんどの消費者ローンで現在取得できるクーポンは、一般的な金利及びリスク環境をよく反映している。

投資家の機会を広げる方程式

強弱が入り混じったシグナルは、期待が持てる投資環境の方程式を作り出す。6.3兆米ドルの巨大なスペシャルティ・ファイナンス市場では、2024年、消費者関連の資産クラス全体を見ると(そして、資産クラス内のオリジネーター全体を見ても)一様ではないパフォーマンスとなっている。そうした状況は、資金とともに優れた判断力を持ちうる投資家にとって魅力的なものになる可能性がある。 

マクロ経済に対する幅広い視野を持てば、経済指標を理解するための重要な知見が得られるが、消費者ローンの投資家は当然ながら、ローンの統計ではなく、具体的な投資機会に注目しなければならない。ABでは、株式市場との類似性を生かした最も効果的なアプローチは、全体的な指標ではなく「個別案件」に注目することだと考えている。

ABとしてはこれだけは明らかであると考えている。消費者は一様ではなく、消費者ローンのパフォーマンスもサイクルを通して同様である。投資家は、特定の種類のローンに特化した特定のローン・オリジネーターからローンを取得することを目指すべきである。そうしたローンは、伝統的な銀行があまりサービスを提供していない消費者向けの自動車ローン、消費者ローン、またはクレジットカード債権であるかもしれない。ABはまた、正しい投資アプローチは的を絞ったアプローチだと考えている。 

そして、おそらく最も重要な点として、特定のローン引き受けに対するアプローチに投資することが極めて重要だと考えている。ABはローン引き受けを、達成しうるパフォーマンスを示唆する最も重要な指標の1つと見なしている(以前の記事『運用者の選別も重要に:消費者ローンへの投資機会を見つけ出す』ご参照)。


ローンの目的は重要だが・・・

例えば、統計は一貫して、消費者が厳しい状況下では、特定の種類の債務を他の債務より優先する傾向があると示している。自動車ローンはそうした返済優先順位の上位にあり、否定的な記事が最近見受けられるものの、ABは(このため及びその他の理由から)同セクターが魅力的だと考えている。

消費者行動のもう1つの重要な要素は、個々のローンの目的に関係している。自動車を購入するか、エネルギー効率が高い窓を取り付ける消費者を考えてもらいたい。その消費者は何か形があるものを債務と関連付け、それが概してその債務の返済可能性に影響を及ぼす。

・・・ローン・オリジネーターも同様である

ローン・オリジネーターの間にもかなりの違いがある。現在見受けられる多額の消費者借り入れは、借り手の信用力がプライムに近いかサブプライムであり、比較的リスクが高い場合を中心に、ノンバンクの貸し手が組成している。これらローンの引き受けの質はさまざまである。

プライベート・クレジット投資家のローン取得能力や引受能力には、そうした理由からプレミアムがつく。ABの見解では、ローン引き受けの健全性は最も信頼できるパフォーマンス指標の1つである。的を絞った借り手、マーケティング戦略、ローンの仕組み、引き受けのファンダメンタルズ、そしてローン・オリジネーターの実績が、すべて大きな違いを生む。

言い換えれば、ローン・オリジネーターもローンの種類と同じくらい重要なのだ。

また、ABの見解では、ローンの取得源になりうる数多くのプラットフォームを徹底的に調べることも重要である。そのオリジネーターの引受哲学の主要な柱は何か? 投資家はそうした考え方を裏付けとなるデータで検証できるのか? マーケティング、引き受け、債権回収の間にどのような関係があるのか?

以上のようなローンについてのダイナミクスの定量分析を行うと、投資家が適切なオリジネーターと協働するかどうかを決定する際に役立てることができる。オリジネーターのリスクに対する考え方と過去のパフォーマンスが一致しない場合は、他のどこかで投資機会を探す時なのかもしれない。

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