早期利下げは米国経済にとって朗報だ。

インフレ率が改善すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)は、想定よりも早期に利下げに向かうだろう。これにより、米国経済への圧力が和らぎ、ソフトランディングが最も可能性の高いシナリオになるはずだ。

FRBの早期利下げの可能性が高まる

FRBが目標とする物価上昇率2.0%へ向けたインフレ抑制の進展は期待外れの状況が続いていたが、ここ数カ月で明るい兆しが見えてきた(図表1)。最初の利下げは2024年末ではなく、9月と想定できるほど状況は改善している。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見方では、2024年に実施される(25ベーシス幅の)利下げは1回ではなく2回であり、2025年まで毎四半期ごとに利下げが実施されるとみている。

つまり、金利は今後数年間で大幅に低下し、米国経済への圧力が緩和されることになる。金利上昇が経済成長の重荷になっていることを示唆する証拠が増えつつあることを踏まえると、これは待ち望まれた展開だ。確かにABは景気減速を想定はしていたが、金利を高止まりさせたままにしておくと、景気減速ではなく景気後退に転じる可能性がある。

ABは、FRBがそのような事態の悪化を招かないよう、すぐに行動を起こすべきであり、そうするだろうと考えている。

住居費の沈静化こそがインフレ抑制への朗報

インフレ率が最近の測定値で顕著に改善したため、中央銀行は利下げ時期の前倒しを正当化するデータを手にしつつある。2024年初来、横ばいで推移してきた消費者物価指数(CPI)のコア・インフレ率は、ここ数カ月で沈静化の流れを取り戻した。

2023年終盤のインフレ沈静化は、翌2024年に6回もの利下げを市場に織り込ませる場面もあったが、ABはそのような展開が実現するとは判断しなかった。その主な理由は、ヘッドラインの数字が示唆するほど、個別の要素の動きが楽観的でなかったからだ。具体的には、商品価格は急速に正常化したが、サービス価格、特に住居費はまったく沈静化していなかった。

最近になって状況は変化し、住居費のインフレが通常の水準まで沈静化する方向で大きな進展があった(図表2)。住宅価格上昇の鈍化がCPIの住居費指数に反映されつつある。この傾向が浸透し続ければ、全体的なコア・インフレ率もまた低下し続けると思われる。

金融緩和は重要な分野を支援する

インフレ率が低下していることから、FRBは近いうちに利下げに踏み切る自信を得るとABは考えている。金利の上昇は幅広いセクターに悪影響を与えているため、これは経済運営の観点から非常に重要なポイントである。

住宅ローン金利の上昇は住宅市場の活動を抑制し、固定資本投資全体を低迷させている。住宅市場はまた、経済の他の部分にも大きな影響を及ぼす。住宅購入は経済活動の一部分に過ぎず、これが減速すれば、すぐに家具やその他の付属品の消費が減速することになる。住宅関連の需要が制限されているため、家計消費全体の伸びは2024年に入って鈍化し、1-3月期は年率換算で1.5%増に留まった。

1.5%という水準は、2023年後半の半分以下であり、長期平均も大きく下回っている。米国経済の過半は家計消費が担っているため、消費の低迷は国内総生産(GDP)の低下に直結する。2023年のGDPが3%以上成長した後、2024年のGDPは1.5%増加すると予想している(第4四半期の前年同期比ベース)。

労働市場の圧力は緩和、しかし注視が必要

米国の労働市場も減速しており、雇用は依然として堅調だが、その勢いは弱まっている。失業率も、今回のサイクルで最も良かった水準からはおよそ0.5%悪化している(図表3)。この悪化のかなりの部分は、移民が急増して労働力人口が増加したことに起因しているが、それでも労働市場が今後数カ月の間に物価を押し上げる可能性は低いことを示唆している。

労働市場を引き続き注視すべき理由は、それが金融緩和を妨げる可能性があるからではなく、逆に金融緩和のペースを加速させる可能性があるからだ。例えば、大規模なレイオフが実施されるなど、労働市場が急減速し始めた場合、FRBが四半期に1回のペースで利下げを実施するという予想は対応として弱すぎることになる。インフレ率が正常化する方向にある以上、労働市場が弱まれば、金融緩和はより大規模なものになるだろう。

上記のような展開はABの基本シナリオではない。失業率は歴史的な水準感からすればかなり良好な水準にある。また、最近の緩やかな悪化も、警戒すべきものというよりは、労働市場が均衡点に戻っていく過程に過ぎないとABは分析している。

足元の環境では、リセッションは起こりそうになく、ソフトランディング(景気後退を伴わずに経済の不均衡が是正される)が最も可能性が高いと、ABは考えている。FRBの金融緩和サイクル入りが間近に迫っていることは、この見通しの実現確率をさらに高めよう。インフレ率の低下に伴う利下げは、2023年よりは経済成長率が鈍化するにしろ、米国経済を軌道に乗せる重要な施策となるはずだ。

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