プライベート・キャピタルが、個人消費者向けの融資にますます用いられている。
銀行は実体経済の多くの分野で融資を抑制しており、それには最も重要な分野も含まれる。2024年1-3月期に米国の国内総生産(GDP)の約68%を占めた消費者向けである。これは投資家にとって、リターンを創出する可能性を高めるほか、プライベート・クレジット・ポートフォリオの分散投資を進める機会であると、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えている。
銀行セクターでは、世界金融危機を経てバランスシートの修復や厳格化された規制の遵守を余儀なくされて以降、金融仲介機能を後退させる動きが続いている。そうした変化により、ミドルマーケットのダイレクト・レンディング(以前の記事『ダイレクト・レンディングの見通し~豊富な投資機会と高いリターンの可能性~』ご参照)が著しく増加し、プレキン社によれば1.5兆米ドル市場になったのを後押ししたほか、他の大部分のプライベート・クレジットという、アセット・クラスの基盤を築くきっかけとなった。
しかし、銀行が近年抑制しているのは企業融資だけではない。欧米の銀行は過去15年間にわたり、消費者及び中小企業向けの融資を大幅に縮小してきた。金利が上昇し、預金流出や資産ポートフォリオの時価評価損失が増加して以降、縮小ペースが加速している。とりわけ米国の地銀でその傾向が強い。
実体経済を動かす燃料
しかし、スペシャルティ・ファイナンスとして知られるこの広義の消費者向け融資の形態が、実体経済の原動力として役立っている。ノンバンク融資市場は6.3兆米ドルの規模があると推測され、企業向けのダイレクト・レンディング市場より何倍も大きいほか、居住用及び商業用不動産、自動車、クレジットカード、中小企業、業務用設備や、知的財産使用料に関連した収入源を含む、さまざまなニッチ・セクター向けの融資の多くを提供している。
それにもかかわらず、スペシャルティ・ファイナンスは投資家のポートフォリオでは依然として過小評価されている。このアセット・クラスの幅広さや一連の機会にうまく対応できるプライベート・クレジット運用者の少なさが、その理由だとABは考えている。ただし、そうした状況がまもなく変わるかもしれない。ある予測によれば、スペシャルティ・ファイナンスのアセット・クラスの市場規模は、2028年までに10兆米ドル近くに膨れ上がる見通しなのだ(図表1)。
ダイレクト・レンディングの分散投資先-それ以上の役割
スペシャルティ・ファイナンスには、スペシャリスト・レンダーが供給する資産の取得、組成、または融資が伴い、主要セグメントのなかに多岐にわたるセクターがある。スペシャルティ・ファイナンスの投資はその多くが数百種類の、そして時には数千種類の担保資産やローンで構成され、それらの契約上のキャッシュフローが、借り手やクレジットのあらゆる特性にわたる分散投資の機会を投資家に提供している。また、スペシャルティ・ファイナンスの投資には次のような重要な特徴がある。
- 定期的な元本返済:元本は投資期間を通して返済される。
- インフレヘッジ:投資は多くの場合、インフレ局面で価値が上がる有形資産で担保される。
- 十分なバッファー:一般的にローンは、原資産の価値や契約上のキャッシュフローより少ない金額で組成される。
- さらなる貸し手保護:取引は直接交渉、組成され、重要な貸し手保護を含めるための仕組みが構築される。そうした仕組みには、借り手に関するコベナンツのほか、オリジネーターによる組成ローンの一定割合の保有や延滞ローンの買取を明記した要件が含まれる。
以上のような特徴は、パブリック及びプライベート市場の両方で、他の資産へのエクスポージャーの分散化を促す可能性もある。そうした分散化には、ミドルマーケットの企業へのダイレクト・レンディングのほか、ハイイールド債券やS&P 500指数などのパブリック市場の資産が含まれる(図表2)。
同時に、スペシャルティ・ファイナンスの資産は、流動性が限られることから相当な利回りプレミアムを提供しており、場合によっては融資の複雑な取り決め事項がある。米国及び英国では、自動車ローンやクレジットカード向けの利回りの多くが20%を超えている。クリフウォーター・ダイレクト・レンディング指数で見た米国のダイレクト・レンディングの利回りは、2024年初めには約12%だったが、米国及び欧州のハイイールド債券などのパブリック・クレジット資産は6~7.5%の間にとどまっている。
欧米市場に投資機会が広がっている
ABの考えでは、今日グローバルの機会のなかでは、北米及び欧州の2つが最大かつ最も利用しやすい市場である。ただし、それぞれの国・地域でそれぞれのアセット・クラスの詳細や微妙な違いを理解することが、成功を収める鍵だと言える。
北米はその規模、厚み、均一な性質を考慮すれば、欧州より成熟した市場である。加えて、担保資産に関するデータを幅広く入手でき、融資や法的枠組みが標準化されており、自動車、クレジットカード、民間の学生ローンを含む主なアセット・クラスのすべてに定評があるスペシャリスト・レンダーがいる。
一方、欧州市場は相対的に小さく不均一であり、データの質もまちまちであるほか、法制度も国によって異なっている。スペシャルティ・ファイナンスへの投資に積極的なプライベート・クレジット運用者の多くが、米国及びカナダの機会に重点を置いている理由を、そうした状況が部分的に説明していると言える。
ただしABでは、欧州の各市場にうまく対応するのに必要な経験、能力、パートナーなどとの関係を有する運用者にとってみれば、欧州の非効率性が機会をもたらしていると考えている。ABの見解では、北米と欧州という両方の大陸にある市場それぞれに相当に大きなエクスポージャーを持てば、分散化の度合いを高めることができるほか、一連の様々な機会のなかで魅力的な相対価値を捉える機会を見つけやすくなるだろう。
ABでは、今日のスペシャルティ・ファイナンスは、10年前に企業向けのダイレクト・レンディングが位置していたポジションにあると考えており、今後は長期間にわたって急成長するだろうと予想している。資本要件を強化する規制を受けて銀行が守勢に回っているため、スペシャリスト・レンダーが引き続き成長し、規模拡大が可能なプライベート・クレジットの資金提供ソリューションを模索するようになるだろう。投資家にとってはつまるところ、リターン創出の可能性が高まり、ダウンサイドリスクからの保護が強化され、クレジットへの資産配分全体を分散化する機会が増えることになるのだ。
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