貸出基準の厳格化と利回りの上昇に加えて、景気サイクルの転換が近づいているとの懸念から、オポチュニスティック・クレジットが注目を集めている。しかし、これはそもそも何を意味するのだろうか。ここでは、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)がこのタイプのクレジットをどう見ており、またそれが投資家に何をもたらすと考えているのかを紹介したい。
オポチュニスティック・クレジットは「ゆがんだ市場への投資」と理解するといいだろう。端的に言えば、パブリック市場であれプライベート市場であれ、クレジット市場の混乱期に時折生じる資産価格のミスプライスを狙って投資する戦略である。 こうした混乱の形態はさまざまで、長続きするものもあれば、一瞬のうちに消えてしまうものもある。そして、リターンを上げられるかどうかは、運用者たちの力量にかかっている。
パブリック市場では、市場のゆがみは循環的に生じる傾向があり、それによって投資家は資産クラス全体を単純化して見てしまいがちになる。例えば、金利上昇によってハイ・イールド社債のスプレッドが突然拡大した場合、伝統的なミューチュアル・ファンドや上場投資信託の運用マネージャーは、損失を抑え、日々のキャッシュを維持するために、流動性の低いポジションを処分し、市場全体のエクスポージャーを急ぎ縮小しなければならない場合がある。
流動性が十分でない資産やほとんどない資産を保有することができるオポチュニスティック・クレジット投資家は、売り急いでいる投資家から格安な価格で債券を買い入れ、価格が持ち直すのを待つという判断をすることもできるだろう。こうした投資家は、伝統的なクレジット投資家には通常見られないような換金性の低さを逆手にとることで、従来のパブリック市場での信用リスクの投資と比較して、超過リターンを得る機会が広がるものと考えられる。
プライベート・セクターでは、市場のゆがみは通常ゆっくり進行し、そうした状況が長引くこともあるため、リターンの機会がしばらく続く可能性がある。例えば、米国の大手銀行は、世界金融危機以降、数多くのタイプの消費者向けや商業用の融資を徐々に減らしており、代わって中堅の地方銀行がそのギャップを埋めている。
しかし、こうした融資を組成し満期まで持ち続けることは、昨今、このような中小金融機関にとってますます難しくなっている。その多くは、預金の着実な減少や資本コストの上昇(図表)、問題を抱えた商業用不動産投資へのエクスポージャー、さらには旧来の低金利で融資された多額の貸出債権を抱えて苦闘しているからである。
オポチュニスティック・クレジット・マネジャーは、こうした状況を銀行からローンを割安で購入し、後日売却して利益を得るチャンスと考えるかもしれない。また、民間のノンバンクが新たな融資を実行するために通常よりも高めの金利で資金提供をすることも考えられる。チャンスは商業用不動産以外にも広がっている。銀行がバランスシートを一掃した上で、新たな融資を実行しようとしているからである。
全天候型の戦略
オポチュニスティック・クレジットは、他のクレジット投資と比べて何が違うのだろうか。第一に、これらの戦略はひとつの市場やセクターに限定されず、あらゆる局面で有望と思われるところに投資できる。「自由自在な」投資アプローチと考えられ、全天候型戦略だと見なすことができる。
第二は、資産価格の値上がりの可能性である。これまで見てきたように、オポチュニスティック・クレジットの投資家が大幅に割安な銘柄を保有することは決して珍しいことではない。これによって、高水準のインカム収入と同時に資産価値増大のチャンスが生まれ、投資家にとってのトータル・リターンが高まる可能性がある。
最後に、パブリック市場・プライベート市場を問わず様々な銘柄を保有することで、典型的なパブリック・プライベートクレジット戦略以上に分散効果が高まり、ダウンサイドリスクの軽減に役立つ可能性がある。
単なるインカム以上のもの
オポチュニスティックなアプローチを既存の投資ポートフォリオにより多く組み入れることで、下落幅を抑えながら全体としてさらに高いインカム収入が期待できると考えられる。
インカム志向の投資家にとって、それは金利やクレジットの分散、そして経済全体への幅広いエクスポージャーを提供してくれる。伝統的な60/40(成長性のある株式60%と安定性のある債券40%を組み合わせた投資手法)の投資家にとっては、パブリック資産よりも流動性は低いが、潜在的にはリターンが高いプライベート市場の投資案件を厳選した上で追加することができる、シンプルな手法となる。また、すでにオルタナティブ戦略に明るい投資家にとっては、(企業ではなく)消費者のクレジット・リスクへのアクセスを通じて投資の分散を図ることができ、商業用不動産やダイレクト・レンディングのようなプライベート市場へのエクスポージャーを補完することができる。
アロケーションにそうした余地を確保できる投資家にとっては、好機があるとABでは考えている。
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