グリーンエネルギーが中心の世界を作ることは、私たちが生きている間で最も資本集約的な事業かもしれない。プライベート投資は、私たちの環境の未来を再定義し、長期的なリターンが期待できるプロジェクトに参加するための直接的なルートを提供する。

高金利や景気後退が懸念される中、プライベート投資に対して懸念を抱く投資家もいるかもしれない。しかし、融資からストラクチャード・ファイナンス、ハードアセットへの投資といったプライベート投資はこれらのリスクに対して説得力のある答えを出すことができるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考える。プライベート・ポートフォリオでは、さまざまな経済状況下で収益性の高いプロジェクトを慎重に選択することができる。また、資産を積極的に管理することで、収益源を改善し、ダウンサイド・リスクを低減することができる。このアプローチは、投資資金の非流動性を補って余りある、経済状況の変化に対するリスク調整後のリターンの可能性を確保するのに役立つとABは考えている。

プライベート投資を検討する3つの理由

再生可能エネルギーへのプライベート投資は、3つの促進要因から恩恵を受けている。第一に、クリーンなエネルギー・ソリューションの展開には膨大な資本が必要であること。第二に、再生可能エネルギー技術の経済的ファンダメンタルズが劇的に向上していること。そして第三に、最近の政府規制や企業の取り組みによるマクロ的な追い風が、ネットゼロの未来への移行において、投資家が魅力的な長期的リターンの可能性を支える好条件を確保する十分な機会を提供している。

その数字は、まさに驚異的だ。専門家は、クリーンエネルギーへの世界的な移行には、2050年までに119兆米ドルから194兆米ドルの投資が必要になると推定している1。BloombergNEF(図表1によると、2022年の再生可能エネルギーへの世界の新規投資は13%増の5,321億米ドルだった。プライベート・デットやプライベート投資が全体の93%を占め、アセット・ファイナンスや小規模な太陽光発電プロジェクトの形で行われた。これに対して公開市場への投資は、全体のわずか3.3%に過ぎなかった。つまり、再生可能エネルギー革命に参加しようとする投資家は、プライベート市場に投資しなければ、その機会の大半を見過ごすことになる。

1BloombergNEFの「New Energy Outlook 2022」

投資家は、再生可能エネルギーの経済性が近年劇的に向上していることに気づくだろう。例えば、太陽光発電や蓄電池システムのコストは過去10年間で急激に下がり、今後も下がり続けると予想されている(図表2)。これにより、化石燃料に対する明らかな競争上のメリットが得られ、投資対象が改善される。消費者調査では、持続可能性に対する要求が明らかに高まっており、エネルギー価格の高騰は化石燃料からの脱却を加速させている。これらの傾向を総合すると、今後数年間は再生可能エネルギー事業の収益と投資リターンが堅調に成長するものとABは考える。

一方、再生可能エネルギー市場は細分化され、それぞれが急成長している。欧米では、再生可能エネルギーへの取り組みが、伝統的な銀行とは異なる資金源が必要な地域やコミュニティのプロジェクトに集中しており、プライベート市場の投資家にとって肥沃な土壌となっている。

インフレ削減法は再生可能エネルギーのゲーム・チェンジャー

米国では、2022年のインフレ削減法(IRA)による優遇措置により、自然エネルギーへのシフトがさらに進むと考えられる。IRAは、クリーンエネルギー・プロジェクトや技術の開発者に対して、少なくとも10年間は税額控除を延長するというもので、米国の産業界にとって画期的なことだ。このような規定が設けられる以前は、税額控除が段階的に廃止されるため、業界は不確実性に悩まされていた。

業界のあらゆる分野が恩恵を受けるはずだ。この法律は、従来の自然エネルギーだけでなく、グリーン水素、持続可能な航空、バイオ燃料など、時間をかけて規模を拡大し、安価にする必要がある新技術にも対応している。

バッテリー・ストレージはその好例だ。IRA以前は、コスト高やサプライチェーンの遅れのために、多くの蓄電池プロジェクトが経済的に成り立たなかった。しかし現在では、低所得者層や化石燃料産業の雇用が多い地域でのプロジェクトには、30%の税額控除が適用され、さらに増額することができる。

エネルギー転換を支援するために、投資家がプライベート・キャピタルを活用する方法はさまざまだ。太陽光発電や風力発電、蓄電池などのハードアセットを購入するケースもある。また、住宅用太陽光発電設備を設置する住宅所有者や、再生可能エネルギー開発プロジェクトや設備を裏付けとする企業への融資もある。また、商業用のエネルギー効率向上のための資金調達にも、プライベート・キャピタルを活用することができる。

ハードアセットを所有する:運転席に座る投資家

ハードアセットへの投資には、いくつかの利点がある。第一に、プライベート市場の投資家は、購入する資産について徹底的なデューデリジェンスを行うことができるため、包括的な評価分析が可能になる。第二に、プライベート市場の投資家は、その資産を積極的に管理し、そのキャッシュフローに影響を与えることができる。第三に、積極的な資産所有は、投資家にダウンサイド・リスクを軽減する直接的な手段を提供する。

資産をコントロールすることで、投資家はプロジェクトの運転席に座ることができる。例えば、太陽光発電プロジェクトを購入することで、太陽光発電施設に隣接して蓄電池を設置し、1日に多くの時間帯に売電できるようにすることができる。その結果、投資家はより多くの収益を得ることができ、電力購入の契約を結んでいる電力引取先に対しても、より強い価値を提案できる可能性がある。

資産のリパワリングは、価値を高めるもう1つの方法だ。このプロセスは、一般的に、経年劣化が進んでおらず、より良いパフォーマンスが期待できる既存の運用プロジェクトを指す。技術や設備をアップグレードすることで、プロジェクトの効率を向上させ、寿命を延ばすことができる。これもまた、投資家にとってより高いリターンをもたらす可能性がある。

ハードアセットを購入することで、重要な契約をコントロールすることもできる。通常、5年、10年、15年の収益契約を結ぶことで、価格と収益性をより明確にすることができる。また、投資家は、より変動が激しいスポット市場に電力を販売することで、より大きなリスクを取ることもできる。

また、プライベート市場の投資家は、資産をコントロールすることで、リスクを軽減するためのハンズオン・アプローチをとることができる。運用や管理の状況を常に把握することで、問題を発見し対処することができる。例えば、太陽光発電設備の生産量が突然低下した場合、木が太陽光パネルの陰になっているのか、インバーターが故障しているのか、リアルタイムでトラブルシューティングを行うことができる。

プライベート・デットが地域社会のグリーン化を支援

デットファイナンスは、エネルギー転換のもう1つの重要な要素だ。商業施設の開発者は、銀行融資に代わる魅力的な選択肢として、プライベート市場の投資家から融資を受けることができる。このような取引は、借り手と債権者の双方にとって非常に有利な経済効果をもたらすことがある。

例えば、テキサス州の風力発電事業者は、2021年に発生した超大型台風で被害を受けた後、融資パッケージを必要としていた。私たちは、運用改善や価格の引き上げの想定に依存しない魅力的な利回りで資本回収ができるよう融資を組成し、さらにプロジェクトへの出資権も付与した。この取引の創造的な仕組みにより、風力発電所のスポンサーは、タックス・エクイティの価値を破壊することになる正式な債務再編を回避することができた。

コミュニティ・ソーラー・プロジェクトも、プライベート・デットが大きな効果を発揮する分野の一例だ。このプロジェクトでは、住宅所有者が屋根にソーラー・パネルを設置するわけではない。発電した電力は、住宅所有者、賃貸業者、企業、さらには自治体などが購入することができる。また、発電した電力は、その地域の投資適格な電力会社と引取契約を結び、配電のために販売されることもある。

融資は、個人のエネルギー転換を促進することもできる。例えば、屋根に太陽光発電を設置し、場合によっては蓄電池を併設して電力使用量を最適化したいと考える住宅所有者がいるとする。家の大きさや希望する設置方法にもよるが、20,000米ドルから50,000米ドルの費用がかかるだろう。ローンを組んで設置することは、経済的にも理にかなっている。多くの場合、月々のローン返済額は、月々の電気代よりもはるかに安くなる。

プライベート市場の投資家は、ローン・ポートフォリオの購入を通じて、貸し手に流動性を提供し、魅力的な長期的リターンの可能性を獲得する役割を担っている。場合によっては、ローンやキャッシュフローから証券を作成し、資産担保証券市場で販売することも可能だ。

プライベート市場の投資家はどのように機会を評価するのか?

公開市場・プライベート市場における投資の評価は、リスクとリターンのトレードオフが重要だ。再生可能プロジェクトへのプライベート投資やプライベート・デットの場合、資産やプロジェクトを分析することは特に複雑な問題だ。一方では、プロジェクトの収益源となる要因や財務的な見通しを比較的よく知ることができる。しかし、再生可能エネルギーへの投資や融資の機会を十分に評価するためには、高度な技術的専門知識が必要だ。

開発段階での資産運用に必要なコストはどのくらいか?契約要素や規制環境は良好か?関連するリスクを特定し、対処することは可能か?これらの質問に答えることは、プロジェクトの経済的な実行可能性を判断するために不可欠である。

コストの評価には、エンジニアの意見が必要だ。また、エンジニアリング会社、調達会社、建設会社と協議して、部品や材料のコスト計算を行う。経済的に実現不可能なプロジェクトでも、税制優遇措置が適用されれば、収益性が高くなり、魅力的なものになることもある。

ハードアセットの場合、オフテイク契約(通常は何年にもわたって合意された期間、固定価格で電力を販売する契約)の質は、投資家にとって安心の柱となる。これらの契約は通常、投資適格の取引先と結ばれているため、電力購入先の信用度が高く、景気減速や不況の際にも持ちこたえることができる。また、このような契約は、オフテイク契約の期間中、プロジェクトや投資家が商品価格下落のリスクにさらされることがないことを意味する。

規制環境も重要な要素である。米国では、公益事業の規制は州ごとの事象であり、デューデリジェンスの強度を高めている。ヨーロッパでは、EU全体の規制だけでなく、各国特有のニュアンスも理解する必要がある。同じようなプロジェクトは2つとなく、よく似たプロジェクトでも現地のルールによって経済性が大きく異なることがある。

プライベート・ポートフォリオを特定する:投資家のためのチェックリスト

エネルギー転換によって生まれるプライベート市場での投資機会に飛び込もうとする投資家は、さまざまなプロジェクトにまたがる多様なポートフォリオから利益を得ることができる。しかし、プライベート資産のポートフォリオ・マネジャーが、この非常に複雑な市場セグメントに投資するのに必要な資質を備えているかどうかは、どのように判断すればいいのだろうか?

ポートフォリオ・チームが、資産を理解するための経験と専門知識を有していることを確認する必要がある。エンジニアリングの専門知識はもちろん、再生可能エネルギー・プロジェクトの契約に関するエコシステムと法的状況を明確に把握することが不可欠である。

この種の専門知識は、プライベート資産の適正な評価に必要な、徹底的なデューデリジェンスに不可欠である。ポートフォリオ・マネジャーが、さまざまなタイプの投資について、どのような結果を予測するかを明確に説明できることを確認しよう。プライベート資産のポートフォリオ・マネジャーは、サプライ・チェーンの障害から貿易摩擦、電力網への接続の遅れなど、リスクについて概説できる必要がある。

マクロ経済的な要因が結果にどのような影響を与えるかを問うことも必要だ。最近では、金利が重要な変数であることは明らかである。クリーンエネルギー市場におけるクレジット・スプレッドの変化や、資産に対する投資や融資の際の資金調達コストは、投資の実行可能性を大きく左右する可能性がある。同様に、不況時にその資産がどのように持ちこたえるかを調べるべきだ。強固な契約はマクロ経済のリスクをヘッジするのに役立つが、不況のリスクやエネルギー価格の下落に弱い個人資産や融資は、せっかくの堅実な保有資産を台無しにする可能性がある。最後に、米国では連邦政府が提供する税額控除を誰もが効率的に利用できるわけではなく、州や国特有のインセンティブや規制がプロジェクトの成否を左右することがある。

プライベート市場の投資家の美徳である忍耐力

ABでは、プライベート投資を成功させる鍵は、投資機会を完璧に値付けしないことだと考える。この原則は常に重要だが、今日のような複雑な市場では特に重要だ。不確定要素に対応するクッションを持つことで、プライベート・ポートフォリオはさまざまな状況に耐え、長期的にリターンの可能性を実現することができる。

プライベート市場の投資家には忍耐力が必要だ。特に、数十年にわたるエネルギー転換に焦点を当てる場合はなおさらだ。しかし、非流動性の裏返しとして、プライベート市場の投資家は市場を追いかける必要がない。柔軟なアプローチと明確な規律があれば、プライベート・ポートフォリオはグレードの低いプロジェクトを避け、最も魅力的な機会に向けて徐々に資本を投下することができる。このようなプライベート・ポートフォリオの投資家は、上場資産と相関のないリターン・ストリームへの持続的な配分と、世界のエネルギー転換を最前列で見られるというメリットを享受することができるだろう。

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