世界の金融市場では、リスク資産にとって良好な投資環境が2018年に入っても続いている。世界経済が力強く回復を続ける中、金融政策は緩和的で、市場のボラティリティは低水準で安定している。現時点では、そうした状況をくつがえすような過熱感はない。
世界的な経済成長
世界経済は好調の波に乗っており、力強いパフォーマンスは幅広い分野に広がっている。企業の景況感を反映する製造業購買担当者指数(PMI)を見ると、2017年は12の主要先進・新興国のうち、少なくとも75%で景気が拡大した(図表1)。
金融政策も景気拡大を支えている。米連邦準備制度理事会(FRB)はバランスシートの縮小に着手しているが、金融政策は依然として世界的に緩和的である。国債利回りは低水準にあるが、インフレも低い水準で落ち着いている。
一部の投資家は、米国のイールドカーブのフラット化が成長鈍化を示唆している可能性があると懸念しているが、それは景気後退のシグナルというよりも量的緩和が生んだ現象である可能性が高い。景気サイクルは成熟しつつあるかもしれないが、まだ終着点には到達していない。
米国の税制改革に関しては、新たな制度がどのような影響をもたらすのか、全体像はまだ分からない。しかし、健全なマクロ経済環境を踏まえれば、徐々にプラス面の効果が拡大すると思われる。一方、大きな懸念材料は、税制改革がインフレ圧力を高める可能性だ。政策当局者が市場の想定以上に急速な金融引締めを強いられれば、市場は急落する可能性もある。
ポートフォリオの見通し: 株式の魅力度が高い
マルチアセット戦略は、株式や債券を含む多様なツールを統合した資産運用手法だ。不動産や世界各国の社債などのさまざまな資産クラスやファクターにもエクスポージャーを分散することで、異なる市場環境で良好なパフォーマンスを生み出すことを目的としている。その資産配分は、市場環境の変化に応じて調整される。
資産配分という観点では、現在は株式でリスクを取ることに投資妙味のある環境が続いている。経済が改善していることに加え、労働コスト抑制などにより利益率が改善していることなどから企業業績が力強く拡大している。2018年は企業収益の伸びが鈍化する見込みだが、それでも5%-10%程度の増益となる可能性が高い。
収益成長と経済政策の組合せが好ましい状態にあるため、当面は金融市場のボラティリティが低水準に留まる可能性があり、それも株式市場を支える要因になる。ボラティリティが長期にわたって低水準に留まるのは異例のことに見えるかもしれないが、過去の実績はそうでもない(図表2)。そして、現時点ではそうした状況を変え得る要因は見当たらない。
地域別では、依然として米国株式にも投資機会があると考えているが、米国では力強い経済成長と労働市場のひっ迫により、市場が想定しているより早いペースでの金利引上げが実施される可能性がある。しかも、米国株式のバリュエーションは高水準で、これは追い風とは言い難い。現時点では、金融政策が米国よりも緩和的でバリュエーションも魅力的な欧州や日本の方が高リターンを期待できそうだ。
また、社債市場の一部にも投資機会があると見ているが、現時点では社債市場よりも株式の魅力が高いと見ている。ハイイールド債のスプレッドは非常にタイトな水準にあるが、企業業績が堅調でスプレッドがタイトな足元の環境下では、株式の方が相対的な上昇余地が大きいと考えられるからだ。金利へのエクスポージャーについては、デュレーションを若干縮小することを検討すべきだと考える。なぜなら、米FRBの金融政策が一段とタカ派的に傾くリスクがあるためだ。
バブルの兆しはほとんど見られず
今のところ、好調な市場環境の変化につながり得るような過剰は、少なくとも民間セクターではほとんど見られない。消費が力強く推移しているほか、企業は設備投資を慎重に進め、余剰キャッシュは自社株買いで株主に還元している。生産能力が過剰になっている様子はなく、ファンダメンタルズ面で経済成長の鈍化を示唆する兆しはほとんど見当たらない。
世界の資本市場はかなり長期にわたって極めて平穏な場面が続いており、このトレンドは今後も続きそうだ。
しかし、それでもボラティリティが急に跳ね上がる可能性に備え、資産配分の分散などによる防衛策をポートフォリオに組み込んでおくことが賢明だろう。そして、市場環境の変化に合わせてダイナミックにエクスポージャーの調整を続けるべきだ。ポートフォリオ構築は、常に機動的に行う必要がある。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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