【はじめに】

新型コロナウイルスは瞬く間に社会、世界経済、各種政策に歴史的な影響を及ぼした。この後遺症は長らく続き、さらには反グローバル化、ポピュリズム、債務膨張などの長期トレンドの動きを加速させるだろう。政府は債務超過にどう対処していくのか、また、これらのトレンドはアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)のマクロ見通しにどのような影響を与えるのだろうか。

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予測は今後変更される可能性があります。 * ドイツ、カナダ、米国、フランス、イタリア、日本、イギリス

2020年9月現在、新型コロナウイルスのパンデミック発生から半年が経過する。その規模は第1波だけでも21世紀に発生した他のパンデミック(SARS、MERS、エボラ熱など)を上回るものであった。

新型コロナウイルスが及ぼした経済的悪影響は既に歴史的といって差し支えない。政府は感染抑制のため、ソーシャルディスタンスとロックダウンによる経済停止に舵を切り、結果として労働市場は大きく傷ついた。また、前例のない規模の公衆衛生対策や金融財政政策が繰り出された。

これらの対策が奏功すれば、いずれ現行の規制は解除され、経済は回復する見通しである。しかし、最初の回復が一服した後はどうであろうか? ABではパンデミック発生に先立ち、低成長、経済成長とインフレのバランス悪化、ひいては高インフレそのものを引き起こす5つの長期的トレンドを捉えていた。

  • +人口動態に起因する負の供給ショック
  • +生産性の伸び悩み
  • +ピュリズム政策の再台頭
  • +政学的紛争の高まり
  • +政府債務の膨張

新型コロナウイルスはこれらのトレンドを加速させるのか、和らげるのか、はたまた影響を与えないのか? パンデミックは既に大きな変化をもたらしている。消費者視点でいうと、映画館や飛行機での移動を伴う旅行は選択肢から外され、生産者側視点では「密」な作業現場は過去の産物となっている。事業破綻や倒産、資産価値暴落・不良債権化に伴う銀行の減損のニュースは珍しくなくなるだろう。また、各種制限・規制が徐々に緩和されたとしても、人々が安心して元の生活に戻るまでには長い時間がかかるかもしれない。

パンデミックが長期のマクロトレンドに顕著な影響を及ぼすのはどのような場合であろうか? それはパンデミックにより発生した力学が既に進行中のトレンドと同じ方向に作用する場合だ。言うなれば開きかけているドアに最後の一押しを加えるようなイメージである。

新型コロナウイルスは反グローバル化を加速させる見込み

グローバル化がパンデミック発生前に既にピークを迎えていたことを踏まえると、反グローバル化は既に開きつつあった扉の1つと言えよう。グローバル化のトレンドを捉える最も容易な方法は、国内総生産(GDP)に占める輸出割合を見ることである。この比率は、第二次世界大戦後、グローバル化の進展に伴い数十年間にわたって着実に上昇しており、すなわちグローバル化とは国境を越えて出荷される商品・サービスの増加を意味してきた。

しかし、2013年以降、グローバル化は反転の動きを見せ始めた(図表)。これは世界金融危機により、グローバルなサプライチェーンの欠陥、特に貿易金融への依存が明らかになったことが一因である。とりわけ自動生産技術の発達は、それまで主流であった低賃金国へのアウトソーシングの動きを抑制し、自国生産を企業にとって実行可能な選択肢に押し上げた。そして、ポピュリズムの復活に一部起因する貿易戦争の激化によって、自由貿易の制度的枠組みの根幹が大きく揺らいでいることは周知のとおりだ。

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新型コロナウイルスは、貿易において致命的な「アキレス腱」となる集中型サプライチェーンの欠陥をあらわにし、反グローバル化の動きを間違いなく加速させている。パンデミックによる悪影響はグローバル貿易に依存していた国々にとって、より深刻なものとなっている。しかし、これは単にサプライチェーンだけの問題にとどまらない。新型コロナウイルスをきっかけに中国と欧米の対立が激化し、反グローバル化の扉を勢いよく開いてしまう恐れがある。

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