グローバルなハイイールド市場の発展により、インカム収入を生み出すうえでグローバルなマルチセクター・アプローチの有効性が高まっている。

ハイイールド市場は長年にわたる発展の結果、投資家はインカム収入の創出源をますます選別できるようになっている。現在は利回りが高く、質の高い投資先が数多く提供されているため、インカム収入を得るためにジェットコースターに乗るようなスリルを味わう必要はなくなっている。それでも、視野を広げることは必要かもしれない。効率的なインカム収入を重視し、ダウンサイドリスクを管理しながら収益を最大化したいと考える投資家は、グローバルなマルチセクター・アプローチを検討すべきだとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えている。

グローバルな視点でインカム投資の機会を拡大

効率的なインカム収入の創出源としては、米国のハイイールド社債が挙げられることが多いが、それだけではない。ABの見方では、効率的にインカム収入を得る最も魅力的な手段のいくつかは、米国以外にも存在する(以前の動画『Seeking Efficient Income in Uncertain Times? Broaden Your Horizons』(英語)ご参照)。グローバルなハイイールド社債市場は米国のハイイールド市場に比べほぼ倍の規模があるため、世界に目を向ければ米国のみを対象とする戦略よりもはるかに多くの選択肢を得ることができる。

グローバルな投資機会を利用する最大の利点のひとつは、ポートフォリオのリスクを分散できることだ。世界のある地域における景気サイクルは、他の地域とはまったく異なる段階にあるかもしれない。同じ業界に属する企業でも、異なる金利環境の下で事業を展開している可能性がある。その結果、発行体や証券レベルで固有の投資機会が生まれる可能性がある(以前の記事『コア・スコア:クレジット投資の新たなアプローチがアルファを創出』ご参照)。こうした非均一性は、投資家は望ましいリスク水準を達成するためにさまざまな手段を活用できることを意味しており、必要に応じてよりディフェンシブなスタンスを取ることも可能になる。

グローバルな投資はポートフォリオの利回りを押し上げ、アルファ(超過収益)の創出にも寄与する可能性がある。米国のハイイールド債はグローバルなハイイールド債をアウトパフォームすることもあれば、アンダーパフォームすることもある。どちらが優位に立つかは、サイクルで変動する傾向がある。米国のハイイールド債のパフォーマンスが高い時期が数年間続いた後、過去2年間はグローバルなハイイールド債が優勢だった。より長期的に見ると、ブルームバーグ・グローバル・ハイイールド指数は1999年以来、ブルームバーグ米国ハイイールド社債指数を平均で0.9%上回っている(図表1)。このトレンドは今後数年間にわたり持続するとABは予想している。

米国ハイイールド債以外にインカム収入を獲得する機会を見つけ出す

インカム収入を重視する今日の投資家は、米国のハイイールド社債以外のセクターにも投資するマルチセクター・アプローチを検討すべきだとABは考えている。例えば、現在は新興国市場の社債、証券化商品、ユーロ圏のハイイールド債、さらには投資適格債などへの機動的な投資から利益を得ることができる。

  • 新興国の社債は歴史的に、上昇相場で投資家が参入する一方で、やや直感に反するが、市場の下落局面ではさほど下振れリスクにさらされずに済んできた(以前の記事『Emerging-Market Corporates’ Most Underappreciated Quality? Resilience』(英語)ご参照)。ABのリサーチでは、収益が米ドルに連動する新興国の社債は、ドル高の恩恵を受けやすいことが示されている。新興国の社債は、急成長を遂げている発展途上国市場の高い潜在力にもアクセスすることができる。
  • 一部の住宅ローン担保証券など証券化商品は魅力的な利回りを提供している。ABの分析では、多くの場合、これらの投資は米国のハイイールド債よりもリスクが低いことが示されている。証券化市場の一部は、米国の消費者セクターにエクスポージャーを分散する効果ももたらしている。
  • 欧州では歴史的に、ハイイールド債の利回りは魅力的な水準にあるように見える。どんな市場環境であろうとも、当初利回りはその後3~5年にわたる将来のリターンを予測する良い指標となる傾向がある。今日の市場では、債券投資にグローバルなアプローチを取り入れ、外国通貨建ての債券を米ドルでヘッジすれば、利回りをさらに引き上げることができる(以前の記事『Overcoming Inertia: How Home Bias Hurts US Investors』(英語)ご参照)。

マルチセクター・アプローチは、より多くのインカム収入を獲得し、潜在的なリターンを高める数多くの機会を提供するだけでなく、ポートフォリオの分散にも役立ち、地政学的な混乱や他のショックに対する防波堤としても機能するとABは考えている。

タイトなスプレッドは投資の障害とはならず

一部の投資家は、社債市場における利回りスプレッドがタイトなことに懸念を抱いている。信用スプレッドは確かにタイト水準にあるがが、それが社債を避ける理由になるとは考えていない。その理由のひとつは、歴史的に見れば、スプレッドは平均して2年以上にわたりタイトな水準が続いてきたことだ(図表2)。そのため、スプレッドが近いうちに大幅に拡大するとは考えにくい。

しかも、スプレッドがタイトであることにはそれなりの理由があるとABは考えている。企業のファンダメンタルズは健全で、それは特にイールドカーブの長期ゾーンにおける需要を支えている(以前の記事『2025 年のクレジット市場見通し:政治情勢の変化にもかかわらず、地盤は堅固』ご参照)。米国のクレジット市場ではトランプ政権が誕生する中で、この傾向が持続すると予想される。2017年の税制改革法案の主な条項は今年期限を迎える予定だが、それが延長または強化された場合、スプレッドは引き続きレンジ内の動きが続く可能性がある。


ハイイールド債で戦略的にリスクを軽減

投資家は投資対象を広げるだけでなく、ハイイールド債に対する見方を改めて考え直してみるべきだ。ハイイールド債は他の債券と同じように見えるが、必ずしも同じ動きを示すわけではない。実際のところ、長期的に見ればハイイールド債は株式の75%のリターンを生み出してきたが、リスクは半分しかない(図表3)。

しかも、株式市場が大幅に下落する場面では、ハイイールド債は株式よりも下落幅が小さいほか、回復も速やかに進むケースが多い。今後数年間にABの予想どおり成長が減速し、株式のリターンが小さくなり、株価バリュエーションも現在の高水準から低下すれば、ハイイールド債への投資はタイミングが好ましいものとなる可能性がある。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が初めて金利を引き下げた後の数年間は、ハイイールド債が歴史的にアウトパフォームしてきた(図表4)。そのため、ハイイールド債は、株式への資金配分のうち少額を振り向ける代替投資先として好ましい可能性がある。

今後1年間は、潜在的なリスクや政策の不透明感が消えることはなさそうだ。しかし、リスクを削減することは、必ずしもインカムを犠牲にすることを意味するわけではない。機動的な投資家にとっては、グローバルかつ多様なセクターを通じたアプローチが、不透明な市場環境を乗り切るための処方箋となるかもしれない。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
オリジナルの英語版はこちら

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2025年2月3日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。

「債券」カテゴリーの最新記事

「債券」カテゴリーでよく読まれている記事

「債券」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。