はじめに

本稿では、2025年の5つの投資テーマについて概略を説明している。これらは必ずしも2025年の取引のみに当てはまるものではなく、むしろアセットオーナーが考えなくてはならない課題で、長期にわたる影響もある。これらは、投資家の期待や資産配分の変更が必要になるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)が考えているトピックである。


資産配分に関する主な結論は以下のとおりである。ABはグローバル株式に対するオーバーウェイトの推奨を維持し、その 中では米国株を明確なオーバーウェイトに修正した。プライベート(非上場)資産へのエクスポージャーは、さらに引き上げる 余地があると考えている(ただし、プライベート・エクイティは除外)。また、国債(名目金利)を通じてデュレーションを戦略的に アンダーウェイトとする一方で、米国のインフレ連動国債(TIPS)は明確なオーバーウェイトとしている。金についてはこれま でもポジティブな見方を示しており、今回は戦略的資産配分において暗号資産への戦略的なポジションを積み増した。


ABの見方では、インフレ率が中~長期的に上昇することは避けられず、今後は財政の持続可能性に関する疑問が絶えず 話題となる可能性が高い。投資家が幅広く実物資産に注力する傾向はまだしばらく続きそうだ。戦術的に見れば、2025年は株式がプラスのリターンを創出すると予想される。

ABはこれまでのリサーチで、均衡インフレ率の上昇と実質成長率の低下が戦略的な背景にあると説明しており、投資家は実物資産へのウェイトを引き上げる方向で資産を再配分する必要がある。この見解の根底にある理由は、新型コロナウイルス流行前の数十年間に利回りを押し下げた大きな構造的要因が一巡し、今は場合によっては逆方向に作用していることだ。これらの要因としては、人口動態の変化、グローバル化から脱グローバル化への転換、エネルギー転換、気候変動などが挙げられる。


トランプ政権の誕生は、それにどんな影響を及ぼすのだろうか? 本稿執筆時点ではまだトランプ政権の政策課題が完全には明らかになっていないが、短期的には、財政支出の拡大や規制緩和を重視し、成長を促す政策が講じられると思われる。だが中~長期的に見れば、トランプ政権は、均衡インフレ率を押し上げ、財政の持続可能性に対する懸念が持続する投資環境へのシフトを加速させることになりそうだ。


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