ダイナミックに運用されるポートフォリオにおいて、信用リスクと金利リスクのバランスをとることは、全天候型のアプローチとなりうる。

米国、英国、欧州の中央銀行は緩和局面に移行し、信用サイクルの変化を示している。世界経済がソフトランディングする可能性は高いとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ではみているが、下振れリスクは高いかもしれない。地政学的紛争、平時における記録的な債務負担、新型コロナウイルスの余波などが、予測が大変難しい状況をつくり出している。

したがって、リスクを意識する債券投資家は、機会を捉えるとともに、ボラティリティの高い時期や突然のドローダウンにも対処できるポートフォリオ戦略を必要とする。ディフェンシブな高格付け債券と高利回りのクレジットを組み合わせたダイナミックなバーベル・アプローチを検討することがタイムリーであるとABでは考える。

安全策を取りすぎるとチャンスを無駄にする

伝統的な投資適格のマルチセクター債券ポートフォリオには、分かりやすいパッケージで、低いデフォルト・リスクと国債を上回る緩やかな利回りの向上という明確な魅力がある。しかし、このアプローチには機会費用が伴う。投資適格債券のみのポートフォリオでは、より効率的にリスクを管理し、より高いインカムと優れたリスク調整後リターンを達成できる可能性のある、幅広い分散投資のメリットを享受することができないだろう。

米国を例にとると、米国国債とBB格またはB格の米国ハイイールド債券を単純に50対50の割合で組み合わせたパッシブ「バーベル」は、様々な指標において、BBB格の米国社債やより広範な米国総合指数よりも歴史的に優れた結果を生み出してきた。これには、より高いインカム、より低いボラティリティ、より低い金利リスク(デュレーション)、より高いリスク調整後リターンなどが含まれる(図表1)。

同じ時期のユーロ市場とグローバル市場のデータも、同様のパターンを示しており、より高いインカム、より高いリスク調整後リターンをもたらしているが、デュレーションはおおむね短く、ボラティリティは同程度である。

負の相関関係にある資産を組み合わせる

クレジット・バーベルは、金利感応度が高い債券と高利回りのクレジット資産を組み合わせたもので、通常、両者のリターンは負の相関関係にある(以前の記事『信用サイクルが転換を迎える局面で有効な債券投資戦略』ご参照)。リスクがより高い、ハイイールド社債のような成長志向のクレジット資産が値下がりすると、国債やその他の金利感応度の高い資産は通常値上がりし、逆もまた同様である。負の相関を持つ資産は、交互にアウトパフォームする傾向があるため、投資家は、一方のアウトパフォーマー(例えば、ハイイールド債)を減らし、他方の割安な債券(例えば、国債)を買うことができる。このアプローチは、歴史的に長期的にリターンを増加させる傾向がある。

50/50バーベルの例では、米国国債を金利リスク、米国ハイイールド社債を信用リスクの代用とした。投資適格ポートフォリオは、より高いインカムとリターンを生み出すための信用リスクへのエクスポージャーが十分でなかったため、このバーベルを下回るパフォーマンスとなった。信用リスクは通常、インカムで十分に補填される。オプション調整後スプレッドをボラティリティで割ったものを単位リスク当たりのインカムの指標として用いると、米国ハイイールド社債が非常に効率的なインカム・ジェネレーターであることがわかる(図表2)。

グルーバル及びユーロのデータでも、米国と同様のランキングを示しており、ハイイールド社債が最も効率的なインカム・ジェネレーターであることは明らかと考えられる。

ハイイールド社債のインカムの貢献は極めて重要である。歴史的に、債券リターンの最大の要因は、キャピタル・ゲインよりもむしろ債券保有者へのインカム・ペイメントによるものである。実際、過去 20 年間の米国ハイイールド社債のインカムによる年率リターンは、年率トータル・リターン をわずかに上回っている。したがって、単位リスク当たりのインカムへのエクスポージャーが低い戦略は、リスク意識の高い投資家にとって魅力的なリターンを生み出すのに苦労する可能性が高い。

適切なバランスを目指す

適切な資産(債券種別)の組み合わせとは?それは各投資家のニーズとリスク許容度によって異なる。クレジット資産は高格付け国債の少なくとも2倍のボラティリティがあるため、インカムの要求が高く、リスク許容度の高い投資家にとっては、単純な50/50の割合が適切かもしれない。そのため、リスク・エクスポージャーに関しては、2つの資産クラスを均等に分割すると、実質的にクレジットに傾くことになる。

よりバランスの取れたエクスポージャーを求める投資家は、より低いリスクと引き換えに僅かなリターンを放棄し、国債65%/ハイイールド債35%という配分に傾くであろう。実際には、最適な組み合わせを求める投資家は、ハイイールド社債だけでなく、投資適格社債や米ドル建ての新興国債券、インフレ連動債、証券化資産など、さまざまな高利回りの債券セクターにも配分するであろう。

適切なバランスを保つために、最も重要なことは、金利リスクと信用リスクの相互作用を明示的に管理する積極的でダイナミックなアプローチであると考える。そのためには、クレジット・バーベルが有効である。分散化された資産を1つのポートフォリオに組み入れることで、リスク管理が容易になり、市場の状況に応じてデュレーションやクレジットにリスク配分を傾斜させることができる。

経済状況が分岐する中、コースに合った馬を選ぶ

世界の3大経済けん引国・地域である米国、欧州、中国が直面する課題はますます多様化している。その結果、金利の先行きとリスク資産のバリュエーションも分岐し続けると予想される。この乖離は、投資家、特にダイナミック・バーベル・アプローチに機会をもたらすとABは考える(以前の記事『債券市場の見通し(2024年10-12月期):コントロールされた金利低下局面における債券戦略』ご参照)。

例えば、ユーロ圏では、ハイイールド債券市場が特に魅力的であると思われる一方(以前の記事『ユーロ・ハイイールド社債市場のリスクをとるに値しうる理由』ご参照)、欧州国債市場の一部は、そのディフェンシブな特性を考慮すれば、妥当な価格水準にあると思われる。成長率が期待外れとなったり、市場が下落に転じたりした場合、欧州中央銀行(ECB)には市場が予想するよりも大幅な利下げ余地が十分にあるとABは分析する。これとは対照的に、米国経済は堅調に見え、米連邦準備制度理事会(FRB)がECB同様に素早いもしくは大幅な利下げに踏み切る可能性は低い。

現在スプレッドが縮小しているとはいえ、ハイイールド・クレジットがバーベル戦略の魅力的な構成要素であり続ける理由はいくつかあると考える(以前の記事『スプレッドはタイトだが、ハイイールド社債の投資機会は続く』ご参照)。これには、魅力的な高利回りや堅調なファンダメンタルズといった現在のメリットと、投資適格への格上げ・投資適格からの格下げの仕組みから生じる構造的なパフォーマンスのメリットの両方が含まれる。

しかし、グローバル市場全体では、低格付けのCCC格証券がデフォルトの大部分を占めている。経済状況が厳しくなっているときには、こうした債券を避けることは理にかなっているかもしれない。このアプローチによって、わずかなリターンを譲歩することで、代わりにデフォルト・リスクを大幅に低減することになる。

アクティブ運用による付加価値の創出

十分に分散されたポートフォリオを構築する方法は一つではない。しかし、マネージャー候補を注意深く吟味し、その投資プロセス(以前の記事『コア・スコア:クレジット投資の新たなアプローチがアルファを創出』ご参照)や金利リスクと信用リスクのバランスを取るアプローチについて学ぶことは重要である。いつ、どの方向に傾くかを知るには、世界中の金利とクレジットのサイクルと、それらがどのように相互作用するかを深く理解する必要がある。

高格付けの債券と高インカム債券をダイナミックにバランスさせたポートフォリオは、ほとんどの市場環境を乗り切る可能性があり、単独の投資適格マルチセクター・マンデートよりも効率的なアプローチであると考える。不安定な世界では、バランスを保つことが重要である。

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