現在のタイトなスプレッドにうんざりしているハイイールド社債投資家は、そうしたスプレッドがもたらす機会を逃している可能性がある。
ハイイールド社債のスプレッドが過去最低水準近くで推移しているため、スプレッドが拡大するまで投資せず、様子見したくなる投資家もいるかもしれない。しかし、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)では、それは間違いになりかねないと考えている。現在のハイイールド社債市場には、小幅なスプレッドにもかかわらず、魅力的な投資ケースがあるとみているからだ。その理由は次のとおりである。
1.スプレッドがタイトなのは好材料があるためである
現在のスプレッドがそれほど小幅である最大の理由は、米国経済のニュースが良好な内容になっているためだ。経済成長が続いており、景気後退に陥る可能性はほとんどないと思われるようになっている。また、企業の健全なファンダメンタルズも寄与している。彼らはコロナ禍以降の数年間でバランスシートを強固なものにし、低金利のうちに借り入れを行ったのだ。その結果、デフォルトが少なくなっており、現在の水準は過去平均を下回るほか、市場で想定されている程度のデフォルトも起きていない。
同時に、世界のハイイールド社債市場では魅力的な利回りが需要を刺激しており、潜在的に高いリターンと低い実績リスクを背景に投資家が強気姿勢をとっている。一方、供給面では、企業は成長投資や買収といった活動よりも、借入金の削減に重点を置いている。その結果、需要が供給を上回るようになっており、それが債券価格を下支えし、スプレッドをタイトに保つという、テクニカル的に見て好ましい状況をもたらしている。
また、借入金削減は、ブルームバーグ米国ハイイールド社債指数の平均満期が過去最低水準まで短縮している現状の原因にもなっている(図表1)。以上のことから、同指数の平均デュレーションと「スプレッド・デュレーション」(スプレッド水準の変化に対する同セクターの価格感応度)は、どちらも過去平均を下回っている。
2.タイトなスプレッドは「長引く」傾向があった
過去実績が導くところによれば、ハイイールド社債のスプレッドはしばらく現在のレンジにとどまる可能性がある。1990年代半ば以降、タイトなスプレッドは平均して2年以上タイトなままだった(図表2)。
投資家が様子見姿勢を保ち、魅力的なインカムやリターンをあげる可能性を逃がすにしては、2年以上は長い期間である。辛抱強い投資家でさえ、無駄に様子見していることに気づくかもしれない。(そして、スプレッドが急拡大する局面では、リスクオフ環境によってその高水準のスプレッドがもたらされているため、リスクを取ることに抵抗を感じない投資家は少ない。)
さらに、スプレッドが300~400ベーシス・ポイント(bps)というタイトな水準のレンジで推移した1994年以降、そうした期間の後に続くリターンは力強く、平均して約6.6%になっている(図表3)。これはABの分析では、マクロ経済ファクターや利回りの水準がスプレッドよりも重要視された結果とみている。
3.利回りは魅力的なまでに高い
ハイイールド社債のスプレッドは相対的に見て低いが、利回りは長年の実績より高くなっている。そして、リターンを予想するための判断材料としては、利回りはヒストリカルに見てスプレッドよりはるかに優れている。過去実績からは、同セクターの最低利回りがあらゆる局面の市場において、その後3~5年間にわたるリターンの優れた目安になってきたことがわかる(図表4)。現在の最低利回りが7.3%であることから、潜在的なリターンはかなり大きいように思われる。
リスクに関して言えば、内容が重要である
それでもなお、スプレッドが拡大する可能性を嫌がる投資家もいるかもしれない。通常は市場の調整局面やリスクオフ環境でスプレットが拡大するため、大規模なポートフォリオ運営という視点からリスクを取るかどうか検討することが重要である。これは特に、株式はオーバーウェイトだが、社債はアンダーウェイトにしている投資家に当てはまる。
高い利回り環境は、ヒストリカルに見ると、株式の約半分のボラティリティで株式に近いリターンをもたらしてきた。ITバブルの崩壊、世界金融危機、コロナ禍など、市場が広範囲にわたって急落した局面では、ハイイールド社債のリターンより株式のリターンの方が急激に悪化し、ハイイールド社債の方が早く持ち直している(図表5)。ABの見解では、ハイイールド社債はそうした特性により、株式への資産配分の一部を代替する賢明な選択肢になっている。
もちろん、スプレッドは拡大するばかりではなく、どちらの方向にも動く可能性がある。また、経済成長率が鈍化しつつあるが、ABは引き続き景気後退に陥る可能性は低いと考えている。米国経済の底力に加え金融緩和サイクルが始まるためである。連邦準備理事会(FRB)が景気後退をうまく回避できれば、スプレッドがなお一層タイト化し、ハイイールド社債市場を短期的に後押しする可能性もある。
いずれにせよ、良好な経済ニュース、健全な企業ファンダメンタルズ、スプレッドが低位安定する傾向、魅力的な利回り水準を考慮すれば、現在のハイイールド社債市場への投資にゴーサインを出す価値があるというのが、ABの見解である。
当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
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