イールドカーブは依然として逆イールドの状態(長短金利逆転)にあり、保守的に利回りを追求したい投資家にとって、ハイイールド社債市場の短期債は格好の投資機会である。

米国と一部の欧州のイールドカーブは依然として逆イールドの状態が続いている。もちろん、これが永遠に続くわけではなく、最終的にインフレは鎮静化し、中央銀行は短期金利を引き下げることができるだろう。逆イールドの環境下、保守的に利回りを追求したい投資家にとって、ハイイールド社債市場の短期債は格好の投資機会になるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ではみている(図表1)

短期ハイイールド社債のバリュエーションは引き続き投資妙味が大きい

米国と欧州のハイイールド社債スプレッドは2023年に入ってタイト化し(それぞれ約93ベーシス・ポイント、約19ベーシス・ポイント)、社債の価格回復が進んでいる。それでも、利回りは過去10年で最も高い水準が維持されており、価格も歴史的水準から見ればまだ非常に低いため、短期ハイイールド社債は依然として魅力的に見える(図表2)

低金利が何年も続いたため、当市場の発行体は極めて低いクーポンの社債を発行することができたが、その後の金利上昇により、これらの債券は額面価格に対して大幅なディスカウント価格で取引されている。

クレジット市場の今後のシナリオを踏まえると、長期的に見ても短期ハイイールド社債市場への投資妙味は特に増していると思われる。額面に対する大幅なディスカウントはリターンのダウンサイドを和らげると同時に、発行体にとっての好材料が発生した場合にはより大きなリターンのアップサイドも期待できる。また、社債の最低利回りは今後3-5年にかけての将来の期待リターンを示す信頼できる指標であることが過去の分析からも判明している。このため、短期ハイイールド社債が現時点の価格水準であれば、十分に妙味のあるリターンが期待できると思われる。

ダウンサイド・リスクの軽減につながるクオリティ高い短期ハイイールド社債

クオリティの高い短期ハイイールド社債に投資することで、金利リスクと景気減速によるデフォルト・リスクという2つの大きなリスクを軽減することができる。信用力が相対的に高い発行体の短期ハイイールド社債は、ファンダメンタルズの観点や金利上昇に対して抵抗力をもつ。また、残存期間が短い債券は、デフォルト・リスクに晒される期間も短い。さらに、満期に向かって債券価格は額面(パー)に向けて上昇するため、金利や景気の変動に影響を受けづらく、着実にリターンを享受することが出来るだろう。

もちろん、グローバル経済の減速に伴い、当市場でも信用ファンダメンタルズが悪化することは避けられず、デフォルトや格下げが発生する確率も高まるだろう。ただ、これまでの経済の減速局面と比べても、健全な財務を有しており、悪化に対するバッファーが確保されている発行体は多い(以前の記事『Under Pressure? High Yield Can Hold Up (Your Income Portfolio)』(英語)ご参照)。セクターや個別発行体の信用ファンダメンタルズにおけるリスクは、そのほとんどが既に価格へ織り込まれていると思われる。発行体の信用力が相対的に高く、残存期間の短いハイイールド社債への投資は、景気見通しが一段と悪化した場合でも、投資のダウンサイド・リスクをさらに軽減できるものと思われる。

信用力が相対的に高いハイイールド社債発行体の 短期債券へ投資することでリスク・リターンのバランスは改善する

保守的なスタンスを維持しながらも、利回りを追求する債券投資家にとって、長い時間軸で見ると、当市場への投資は更なる利点があることが分かる。信用力が相対的に高く、短期ゾーンのハイイールド社債へ投資した場合、ハイイールド社債市場全体と比較し、利回りは小幅に低下はするものの、ボラティリティは大幅に低下する傾向(図表3)。

事実、2023年8月31日までの20年間で、残存期間1年~5年のBB格及びB格のハイイールド社債は、ハイイールド社債市場全体のリターンの88%以上を獲得しているが、下落幅の月次平均は約63%に抑えられている。その結果、これらのハイイールド社債は、長期(5年から10年)のハイイールド社債よりも優れたリスク調整後リターンをもたらす結果となっている。

しかし、こうしたハイイールド社債が本領を発揮するのは、市場に極度なストレスが生じた時である。このような局面では、相対的に信用力が高いハイイールド社債発行体の短期債券は、市場全体と比較しても、はるかに小さな下落率にとどまっている(図表4)

短期~中期の見通しについては、先行きが不透明な状態にあり、不安定な展開が予想されるものの、クレジット投資家は、短期ハイイールド社債へ投資することで、リスク調整後リターンの観点から、大きな利益を得ることができるとABでは考える。タイミングを計ろうとしている投資家は、現状の高い利回り水準を見るべきであり、タイミングを計り過ぎて機会を逃せば、大きな損失を被ることにもなりかねない。

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