米国の10年国債利回りは過去2年間にわたり、着実に上昇してきた。だが債券投資家は、今後は利回りの低下に備える必要がある。

過去1年間は米国国債利回りが不安定な動きを示し、さまざまな経済ニュースに反応して上下を繰り返してきた。10年国債利回りは2023年4.3%まで上昇し、一部の市場関係者は5.0%への上昇を予想している。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)はその見方に同意できない。米国国債利回りはいずれ低下に向かい、債券投資家にとって魅力的な買い場が到来する可能性を想定している。

利回りが低下すると考える理由

米国国債利回りが低下するには、次の3つの条件のうち少なくとも1つが実現する必要がある。それらは、米国の労働市場が鈍化していることを示すさらなる証し、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%に向けたインフレ率の持続的な低下、中規模の地方銀行の低迷が続くこと、の3つである。現在のところ、この3つすべてが当てはまるが、だからといって、経済指標が発表されるたびに金利が短期的に不安定な動きを示す可能性がないことを意味するわけではない。

中小規模の多くの企業にとって借り入れコストが上昇しており、企業オーナーはいずれ、従業員数を増やし続けることが妥当かどうか決断する必要が生じるだろう。新型コロナウイルスのパンデミックの際に積み上がった消費者の過剰貯蓄がなくなるのに伴い、その答えはますます「ノー」に傾く可能性がある。2023年はこれまでのところ、雇用の伸びは鈍化しながらも安定を保っているが、求人数が減少しつつある一方で、賃金の伸びは落ち着き始めている(図表1)。それは、短期的に消費支出が鈍化する可能性を示唆している(以前の記事『What Is It About the US Consumer?』(英語)ご参照)。

政策立案者が望むほど速いペースではないものの、インフレ率も鈍化している。FRBがインフレのバロメーターとして重視している個人消費支出価格指数は、2023年7月に2カ月連続で0.2%上昇し、利回りをやや押し上げる圧力となった。それでも、この指数は前年比で2年超ぶりの低い伸びに鈍化している。

それに加え、地方銀行は流動性圧力に直面している。銀行システムの流動性を高めるために創設されたFRBの銀行ターム・ファンディング・プログラムは、2024年3月に期限切れを迎える。このため銀行の流動性は今なお懸念すべき問題であり、地方金融機関が自身のバランスシートからプライベート・クレジットやレバ レッジド・ローンを削減しようとしていることを踏まえれば、制度の期限切れ以降はFRBも地方銀行関連のリスクに再度注意を払う必要が高まる。中小規模の企業に対する貸し手としての地方銀行の重要性を考えれば、これはとりわけ重要な問題と言える。

経済リスクも利回りを押し下げる可能性

景気の健全性を示す他の指標が悪化した場合にも米国国債利回りが低下する可能性がある。企業の業況感を測る信頼性の高い指標であるサプライマネジメント協会(ISM)の購買担当者景気指数(PMI)は、2023年8月に予想を下回った。歴史的に、PMIの水準と米国国債利回りの間には関係があるため、この指標は注視する必要がある。

米国の財政赤字も利回りに影響を与える可能性がある。議会予算局によると、2024年から2033年までの累積赤字は20兆ドルを突破し、GDPの6%を上回ると見込まれている。米国の財政赤字がGDPの6%を超えるのは歴史的に見ても稀なことだ。債務の利払いコストが膨らめば、米政府は他の用途に十分支出できなくなり、経済成長を妨げることになりかねない。

もちろん、最終的に利回りを左右できるのはFRBだ。フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は5.25~5.5%で、金融政策はすでに抑制的な領域にある。経済が着実に成長してもインフレ率の鈍化が続けば、FRBは中立的な金利とされる2.5%に金利を誘導しようとするだろう。米国が景気後退に陥れば、金利はさらに低下する可能性が高い(図表2)

結局のところ、景気減速の理由はひとつである必要はない。どんな要因が重なっても潮流が変わる可能性はある。現時点では、米国10年国債利回りは年末まで3.5~4%で推移するとABは予想している。

債券にとって魅力的な見通し

債券投資家にとって、上記のレンジを超えた金利水準は絶好の買い場、またはデュレーションを長期化する好機となる可能性がある。債券のバリュエーションは魅力的で、景気減速の可能性があるにもかかわらず、発行体である企業は過去の景気減速局面に比べて財務的にはるかに良好な状態にあり、バランスシートが健全で、インタレスト・カバレッジ・レシオも高水準にある。

だが、利回りが上昇中の局面においては、投資タイミングの判断が難しい。投資家は、政府債と期間の長いハイイールド債を組み合わせることで今後の金利低下による恩恵を受けるような工夫を検討すべきだと思われる。こうした分散型の「バーベル」戦略は、金利リスクと信用リスクのバランスを取ることが可能で、ハイイールド債からインカム収入を得られる一方で、政府債は市場環境が不安定化した場面で安定装置としての役割を果たしてくれる。

ABはこの戦略について、債券投資の全天候型アプローチとみなしているが、現環境はこの戦略の見通しが特に良好だと考えている。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2023年9月12日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。

「債券」カテゴリーの最新記事

「債券」カテゴリーでよく読まれている記事

「債券」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。