地方債市場は、ここ数年で最も高い利回りで、ますます魅力的に見える
2022年に過去40年間で最悪の結果となった地方債市場は、2023年に地合いを回復した。途中、多少の乱高下はあったものの、ブルームバーグ地方債指数は6月30日までに+2.67%のリターンを記録した。
2023年年央にかけて不安が和らぐと、投資家は徐々に市場に戻ってきた。多くの投資家は、地方債発行体の堅調なファンダメンタルズ、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げサイクルの終わりに近づいている可能性、歴史的に高い利回りといった魅力に引かれた(図表1)。
好転する市場における地方債投資の年央の戦略
アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)には、これは地方債への非常に魅力的なエントリー・ポイントのように思える。しかし、多くの投資家は現金や現金同等物に資金を置いたまま様子を見ている。米国国債に比べて魅力的なリターンを逃しているだけでなく(2022年後半以降、地方債は国債をアウトパフォームしている)、大きな潜在的リターンを放棄しているのだ。ここでは、現在の環境をどのように活用できるかを考える。
デュレーション・ターゲットの延長。12-18カ月後には利回りが低下すると予想されるため、デュレーションの長期化は地方債投資家の最も強力な味方となるはずだ。
例えば、米国連邦税の最高税率40.8%の投資家にとって、3カ月物米国T-billの税引き後利回りは現在3.21%である。2023年6月30日現在、平均デュレーションが6年であるブルームバーグ地方債指数の利回り3.52%と比較してみよう。今後1年間で、地方債利回りがたった50ベーシス・ポイント低下するだけで、3.52%の利回りに3.00%の値上がり益が加わり、税引き後リターンは合計6.52%となる。3カ月物米国T-bill利回りが50ベーシス・ポイント低下した場合、価格上昇はわずか0.12%で、税引き後リターンの合計は3.33%にすぎない。
バーベル型の満期構成を検討する。現在デュレーションを延長することは、金利サイクルの次の局面を活用するのに役立つが、デュレーション目標を達成するための全天候型戦略はない。ある種のイールドカーブ環境では、満期構成をラダー型にしたり、ブレッド型にしたりするアプローチが有効である。しかし、短期債の利回りが長期債の利回りを上回る今日の逆イールドでは、短期債と長期債の両方を組み合わせるバーベル・アプローチが、イールドカーブがより正常な上昇傾斜(順イールド)に向かうにつれて、より良い投資結果につながる可能性がある。
魅力的な信用スプレッドを活用する。地方債の中でもBBB格などのクレジットに注目し、リターンポテンシャルを高める方法もある。AAA格の地方債に比べた、このような地方債のイールド・プレミアム(上乗せ利回り)は、過去の平均の約2倍である。しかし、発行体間だけでなく、セクター間でも選別が必要だ。景気減速が予想される中、各州の財政状態は依然として良好であり(以前の記事『地方債:景気後退への備えはできているか?』ご参照)、多くの地方債セクターが州の財政の健全性の恩恵を受けられるが(以前の記事『Unpacking Muni Opportunities in a Slowing Economy』(英語)ご参照)、全てがそうなるわけではない。
しかし、一般的に地方債の発行体は回復力があり、課税、歳入の増額、経費の削減を行う固有の権限を持っているため、デフォルトに陥ったことはほとんどない(以前の記事『米国地方債のデフォルトが滅多に起きない5つの理由』ご参照)。1970年以来、投資適格地方債の10年間の累積デフォルト率は0.1%であるのに対し、同格付の社債は2.2%である。
今のところ、国債よりも地方債の方が有利である。また、現在の利回りで投資をすると考えると、利回りが低下し始めたら、国債よりも地方債の方がはるかに有利になるとABでは考える。
米国国債と地方債の税引き後利回りの関係は、大きく変動する可能性がある。例えば、年初は米国国債が短期地方債より有利であったため、ABはその利点を活用した。しかし、年央にはAAA格の地方債の方が魅力的になっていた。実際、スプレッドに基づくと、現在ではイールドカーブ全体で国債に対して割安なものからフェアバリューなものまであり、そのほとんどは過去5年の平均に非常に近い水準となっている(図表2)。
しかし、状況は一瞬のものであり、地方債が相対的に割高になれば、国債に戻すことは理にかなっている。ここでは、柔軟性が鍵となる。
大幅な景気後退がなければ、2023年の地方債市場は引き続き好調に推移するとABでは考える。8月までに940億米ドルのクーポンと満期償還の再投資が予想される一方で、供給は歴史的な低水準で、僅かな新規発行しか見込まれない「サマー・テクニカル」は、特に価格を下支えするはずだ。
まだ手をこまねいている投資家にとって、今が再び地方債への投資を検討する絶好の機会であるとABではみている。すでに地方債へ投資している投資家は、柔軟性を保ち、デュレーションを長くしたり、クレジットを追加したりすることをいとわず、地方債の魅力がもたらす恩恵を受け続けるべきであると考える。
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