FRB(連邦準備制度理事会)による利上げが米国経済を減速させる中、投資家は米国ハイイールド社債に対する警戒感を強めている。表面的には、こうした見方は間違いではなく、過去を振り返ると、成長が鈍化する局面では企業の信用力は悪化している。今回も社債のデフォルトや格下げが増えるが、インカム重視の投資家は臆することなく、当市場に投資すべきであるとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は考えており、その理由を5つ以下で紹介したい。

理由1:後期に入ったクレジット・サイクルにしては強いファンダメンタルズが維持されている

大半の景気後退局面では、はじめからハイイールド企業のファンダメンタルズはぜい弱な状態にあるが、今回は異なる。クレジット・サイクルが後期に入る中、今回も例外なくファンダメンタルズの悪化は始まっているが、悪化の開始水準が過去と異なる点に投資家は注目すべきである。新型コロナウイルスのパンデミックにより、先行き不透明感が大きく拡大する中、当市場の発行体は財務レバレッジ削減や手元流動性の強化など信用力の強化に努めてきた。新型コロナウイルスの脅威が去り、米国経済が再開と共に業績が回復した後も、発行体の多くは保守的な財務運営を続けており、代表的なクレジット指標(財務レバレッジ、カバレッジ・レシオ、利益率、フリー・キャッシュ・フロー)は、長期的に見ても非常に健全な水準へ改善している。クレジット・サイクルが後期に入る今、こうした指標の悪化は避けられないが、発行体の多くはマクロ経済の更なる減速や企業に対する需要の低下を十分に吸収できる財務余力を確保している。

また、発行体の信用力以外にも投資ユニバースの構造変化にも注目する必要がある。新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた2020年は、信用力がぜい弱だった発行体の破綻が相次ぎ、当市場でもデフォルト率が上昇した(2020年10月のピーク時デフォルト率6.3%)。これらデフォルトによって、外部環境の変化に脆弱な発行体は既に当市場から除外されており、当市場の信用力はここ数年で引き上がっている。さらに、パンデミックは投資適格社債市場にも信用悪化をもたらし、中長期的に投資適格級の信用力を維持してきた一部の発行体(フォーリンエンジェル)がハイイールド社債市場へ格下げされたことも、当市場全体の信用力を引き上げる結果となった。当市場における最上位格付・BB格の構成比率は、市場全体の約半分(49%)を占めており、これは歴史的に見ても非常に高い水準である(過去20年平均比+6%)。

低位での推移が続いた社債のデフォルト率は、今後上昇に転じると見ているが、これらの事実に基づき、デフォルト率は、今後12-18カ月の期間で3-4%程度の上昇に留まるとABでは予想している。なお、新型コロナウイルス発生直後は、当市場の発行体が社債を起債する際、より良い条件を求めて担保付で資金調達を行う流れがあった。その結果、市場全体に占める有担保社債の割合は、長期平均を上回る31%に拡大し、この点も当市場にとってサポート材料になっている。

理由2:前倒しでリファイナンスが行われた

新型コロナウイルス発生以降、長く続いた良好な低金利環境を活用し、当市場では早期に前倒しでリファイナンスを行い、負債を長期化する流れが続いた。そのため、償還期日が差し迫っている債券は限定的であり、2024年末までに償還期日が到来する債券の割合は、たった5%しかない。満期の中心は2020年代後半以降に広く分散しており、デフォルト率が大きく上昇しないというABの見通しはこの事実にも基づいている。

また、前倒しリファイナンスが低金利環境で行われたため、当市場の固定クーポンの平均は5.8%であり、足元の最低利回り8.5%を大幅に下回る。利払い能力は引続き健全さが維持されている(図表1)

理由3:歴史的に見ても高い利回りを提供している

一時的な急上昇局面を除けば、米国ハイイールド社債市場の利回りは過去を上回る高水準に達している。これはインカムを求める債券投資家にとって、またとない機会である。過去、利回りが高かった時期を振り返ると、その時点の利回り水準は、そこから5年間のトータル・リターンと近いものとなっており、足元の利回りは今後の期待リターンを示唆する効果的な指標となる可能性がある(図表2

利回りと将来 5 年間のリターンの関係は、世界金融危機というマクロ経済と金融市場双方に大きな混乱をもたらした局面でも機能していた。仮に投資家が 2007 年 5 月に利回り 7.5%で米国ハイイールド社債市場にエントリーし、一時は 36%も下落したボラティリティを乗り切り、投資を5年間維持した場合、その投資家は年率換算で 7.6% のトータル・リターンを得ることができた。

当然、投資期中には社債のデフォルトが発生しており、キャピタルロスは生じているが、ハイイールド社債は満期前に早期償還となるケースが多々あり、その際に発行体は投資家に対してプレミアムを支払っており、デフォルトによるキャピタルロスを相殺している。これも長期投資におけるリターンの確信度を高める要因の1つとなっている。

理由4:タイミングを計り過ぎると、価格回復に乗り遅れる可能性

これまで紹介してきた多くのサポート材料があるにも関わらず、多くの投資家は、マクロ経済がリセッションリスクに瀕し、スプレッドが長期平均にある現状、当市場にエントリーすることをためらっている。

しかし、価格が底打ちし、回復局面に入る絶好のタイミングでエントリーすることは非常に困難であり、タイミングを計り過ぎると、足元の高い利回りを獲得する機会を逸してしまうだろう。過去の実績を見ても、当市場の価格は回復トレンドに入ると、比較的早い速度で価格が上昇している。2000年以降で見ると、ハイイールド社債市場は、5%超のドローダウンを経験した後、平均5カ月で回復しており、2カ月で回復したことさえあった(図表3)。さらに回復後も上昇基調が続く傾向が見られ、価格が底打ちしてからの12カ月トータル・リターンは平均で22%もあった。

理由5:株式エクスポージャーのリスク抑制に活用

株式投資家は、足元の環境下、投資ポートフォリオのリスク抑制につながるハイイールド社債の組み入れを検討すべきだとABは考える。株価の下落局面では、大半のケースでハイイールド社債の下落率は、株式対比抑制されてきた(図表4。また、株式はドローダウンからの回復に時間がかかる傾向もある。

米国株式のエクスポージャーを一部でも米国ハイイールド社債へシフトすることは効果的であり、より優れたリスク調整後リターンを享受できる可能性が高まる。ハイイールド社債投資は、リスクオフ解消後のアップサイドをあまり犠牲にすることなく、株式に集中している投資資産全体のボラティリティを引き下げることが可能な資産クラスである。

以上のことから、クレジット・サイクルの後期であっても、ハイイールド社債への投資を検討すべきであり、あしもとの環境下、ハイイールド社債はインカムを求める投資家のポートフォリオにおいて重要な役割を果たすと考えています。

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