2023年1-3月期は経済やインフレに関するデータの変動に市場が反応し、中央銀行が舵取りに苦労する中、債券投資家は紆余曲折に満ちた市場の動きに苦しめられた。3月には、米国で大手商業銀行2行の破綻によってリスクを見直そうとする動きが高まり、市場は激しく動揺した。本稿では、今回のイベントによる主な教訓と、不透明な環境下で注目を集めている戦略について紹介したい。

銀行破綻は2008年の再現の予兆とはならず

3月に突然起こった銀行破綻は、世界金融危機が再現するのではないかという投資家の不安をかきたてた。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、その心配はないと考えている。その主な理由は、銀行が2008年に比べてはるかに健全になっているからだ。前回の金融危機以降に規制が強化された結果、銀行のバランスシート上の負債や不良資産が大幅に減少している。

足元のイベントは、預金者の動きも素早ければ、規制当局の対応も迅速で、全てが突然に起こったように見えた。預金者は最新テクノロジーを通じてより多くの情報を瞬時に得ることが可能になり、スマートフォン上で数回クリックするだけで資産を移動できるようになった。同様に、規制当局も銀行のストレスを和らげ、破綻する可能性や実際の破綻に対処するため迅速に行動している。米国の連邦預金保険公社(FDIC)、連邦準備制度理事会(FRB)、財務省は、シリコンバレー銀行の破綻から4日以内に預金保証と緊急資金供給プログラムを実施したほか、必要に応じてさらなる措置を講じる方針を示唆した。

銀行セクターの不安定な動きはしばらく続くだろうが、世界的な金融危機が再び起きるとは考えにくい。実際、信用力の観点からは、銀行はこれまでで最も健全な状態にある。

銀行危機で金融環境がタイト化

ABの分析では、景気後退に陥る確率や、それが深刻化する可能性が高まっている。その理由は、さらなる銀行破綻が予想されるからではなく、システミックリスクが高まっているという認識が広がるだけで金融を引き締める効果があるからだ。それにもかかわらず、大半の主要中央銀行は引き締め策を推進してきた。FRB、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行はいずれも、銀行破綻が起きた直後に政策金利を25-50ベーシス・ポイント引き上げた。

それは、彼らの感覚が鈍いからではない。むしろ、最近の利上げは、銀行セクターが今回の危機を乗り切るうえで十分な体力を持っていると中央銀行が考えていることを示唆している。実際、より保守的な商業銀行の行動は、中央銀行の政策目標を後押ししている。銀行の融資基準が厳しくなれば、借り入れや支出が減少し、成長やインフレ(以前の動画『Inflation? Interest Rates? Look to the Longer Term』(英語)ご参照)の抑制を目指す政策当局(以前の記事『銀行セクターの混乱を受け、米国の金融政策は慎重かつ楽観的に歩みを進める』ご参照)を手助けすることになる。その結果、中央銀行はそうでない場合に比べ、利上げ幅を節約することが可能になる。

負の相関が復活 

伝統的に、投資家は株式市場や他のリスク資産が危機に直面した場合の「安全な逃避先」として、国債の果たす役割を評価してきた。

しかし、2022年には慣例に反して株式市場と債券市場が同時に下落し、投資家はほとんど逃げ場を失った。両市場のリターンが足並みをそろえて悪化することは滅多にないため、市場関係者は、株式と債券が逆相関を示す時代は過ぎ去ったのではないかと考えた。

最近起こった市場イベントは、それが誤りであることを裏付けている。3月にはリスク資産が売り込まれる一方で、米国国債は力強く上昇し、リスクオフの環境下で資産クラス間の相関がマイナスとなることが改めて確認された。復活したこうした関係は今後も続くと予想される。株式やハイイールド債などのグロース資産は、景気後退の可能性が高まり、インフレ期待が低下すると、ボラティリティが高まる傾向がある。

成功に向けた戦略  

ここで、今日の不安定な環境下でアクティブ運用の債券投資家が成功するための方法を紹介したい。

1. デュレーションを管理する: 金利への感応度を示すデュレーションに戦術的な対応を取る。それは、利回りが低位で推移する場面ではポートフォリオの平均的な金利エクスポージャーをやや短期化し、利回りが上昇している時にはやや長期化することを意味している。超短期的な投資を続けている場合には、今すぐデュレーションの長期化を検討したほうがいい。インフレ率が低下し、景気が減速すれば、デュレーションがポートフォリオに恩恵をもたらす傾向がある。

2. 質の高いクレジットを選好する: リスク資産の利回りは数年ぶりの高水準にあり、投資家が長く待ち望んできた投資機会が到来している。投資適格社債(以前の記事『社債市場の2023年見通し: 健全なファンダメンタルズと高い利回り』ご参照)、ハイイールド社債、商業用モーゲージ担保証券や信用リスク移転証券といった証券化資産などの「スプレッドもの」は以前より高水準となったインカム収入源となるため、インフレに備えた緩衝材としての役割を果たすこともできる。ただし、銘柄をしっかり選別し、流動性に留意する必要がある。格付けがCCCの社債(特にシクリカルなセクター)、低格付けの新興国ソブリン債、低格付けの証券化商品は、景気が悪化した場合に最も大きな影響を被りやすい。そのため、慎重な銘柄選択が引き続き重要になる。

3. バランスの取れたアプローチを選択する 最も効果的なアクティブ戦略の1つは、国債や他の金利に敏感な資産と、成長志向のクレジット資産を組み合わせ、単一のポートフォリオでダイナミックに運用することである。このアプローチは、金利と信用リスクの相互作用を管理し、特定の時点でどちらに傾斜すべきかについて、マネジャーがより適切な判断を下すのに役立ちうる。負の相関を持つ資産をリバランスする能力は、リスク資産が売り込まれた場合にドローダウンを抑えながら、インカム収入と潜在的なリターンを生み出すことに寄与する。

4. 機動的に行動する: アクティブ運用のマネジャーは、他の投資家がニュースに反応する中で、急速に変化するバリュエーションを巧みにとらえ、一瞬のチャンスを生かすことができるよう、準備を整えておく必要がある。一般的に、グローバルなマルチセクター・アプローチは、投資家が市場環境やバリュエーションを注視しながら、状況の変化に応じてポートフォリオのセクター及び地域構成を修正できるため、経済や金融市場がダイナミックに動く市場環境に適している。

ポジティブな姿勢を維持

今後数カ月は中央銀行や資本市場が経済やインフレデータの変動に対応しようとするため、ボラティリティが高止まりすると予想される。しかし、結局のところ、市場環境は予測不能かもしれないが、債券投資家は大きなリターンを得るための多くのツールを手にしている。現在の高い利回りや、時間が経つにつれて成長やインフレ率が鈍化するとみられることを踏まえれば、2023年は債券のリターンについて強気に考えることができるだろう。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
 

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2023年4月3日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
 

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@editalliancebernsteinまでお寄せください。

「債券」カテゴリーの最新記事

「債券」カテゴリーでよく読まれている記事

「債券」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。