米国と欧州における足元の銀行危機は、株式市場や債券市場を揺るがした。欧米当局とも迅速な行動を取り、金融システムが打撃を被る事態を防いで市場のボラティリティを抑えることができた。これらの出来事により、リスク管理の重要性は勿論だが、リスクを和らげつつ同時にリターン獲得を狙う投資戦略の価値が浮き彫りになったと考えている。

歴史的に見ると、ハイイールド債の中で格付けが高く期間の短い銘柄群は、ディフェンシブな性格を持ちながら高いリターンを創出してきた。現在は北米、欧州、アジアの一部で短期金利が長期金利を上回っているため、投資家はもはや、さらなるインカム収入を得るために金利リスク(デュレーション)を引き上げる必要はなくなっている。

短期債はリスクを引き下げる

短期のハイイールド債は償還までの期間が短いため、デフォルト・リスクや金利リスクの影響を受けにくく、本質的に長期の債券に比べリスクが低い。それに加え、足元では多くの債券の価格が額面を下回っているため(図表1)、満期に近づくにつれて価格が上昇するとみられ、キャピタルゲインを手にすることもできる。

しかも、短期のハイイールド債のうち、格付けの高い銘柄に投資を集中すれば、投資家は利回りの低下幅を比較的小さく抑えながら、よりディフェンシブなポートフォリオを構築することができる(図表2)

2022年9月30日までの20年間に、満期までの期間が1-5年のBB及びB格のハイイールド債は、ハイイールド債市場全体のリターンの80%以上を確保する一方、月平均ドローダウンは約50%にとどまった。その結果、短期のハイイールド債は、期間の長い(5-10年)ハイイールド債に比べ、優れたリスク調整後リターンをもたらした。しかし、短期のハイイールド債がその真価を発揮するのは、市場の緊張が極度に高まっている場面だ。こうした時期には、格付けが高く期間の短いハイイールド債は、世界及び米国のハイイールド市場に比べ、市場の下落に対するキャプチャー・レシオ(追随の度合い)がはるかに低くなっている(図表3)

アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の分析に基づけば、市場環境に応じて投資適格債を含む高格付け銘柄に資金を配分するようフレキシブルに運用する短期ハイイールド戦略は、さらに安定したパフォーマンスを実現できる可能性がある。市場環境の変化に応じ て、リターン追求型債券とディフェンシブな債券への配分を変えることで、投資家はリスク志向が高まった時期に高いリターンを獲得すると同時に、市場が不安定な場面ではダウンサイドリスクから資産を守る機会を手にできる可能性がある。

逆イールドは短期債に有利

現在はイールドカーブが逆転しており、満期までの期間が5年以下のハイイールド債の利回りが長期のハイイールド債に比べかなり高い水準にあるため、投資家にとって、満期の短いハイイールド債に投資する絶好のタイミングかもしれない(図表4)

不透明感に包まれた市場環境では、満期が短く格付けの高いハイイールド戦略は、魅力的なリスク調整後リターンを創出する上でとりわけ適しているとABは考える。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら
 

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