ようやく債券投資がデジタルの時代に入りつつあり、投資家はマネジャーがその流れに追いつくために何をしているのか、注視する必要がある。より有利なプライシングからより優れたソリューション提案まで、債券運用を変化させているデジタル革命は様々な恩恵をもたらす可能性がある 。

フィンテックを活用しているマネジャーと、していないマネジャーの格差を把握するには、多くの資産運用会社の債券運用チームがいかに前時代的なのかを理解することが重要だ。米国社債の名目元本ベースでほぼ80%の取引は電話で執行されている。クレジット・リサーチにおける近年最大のイノベーションは1985年に登場したマイクロソフトのエクセルである。

債券運用の投資プロセスはアナログそのものだ。多くの運用会社のポートフォリオ・マネジャーは、さまざまなアナリスト・チームと長い時間をかけてやり取りしながら投資アイデアを評価し、その結果をトレーダーに伝える。それを受けたトレーダーはやはり長い時間をかけて多くのブローカーとやりとりし、その投資アイデアを妥当な価格で執行できるかどうかを確かめる。それができないと分かれば、すべての面倒なプロセスを初めからやり直すことになる。

これに変わる望ましい手法がある。実際、先進的な債券マネジャーは、フィンテックを活用してすでにヒトと機械が最高の能力を発揮できる環境を作り出し、投資アイデアの迅速な執行に役立てている。コンピューターは膨大なデータを目にもとまらぬ速さで処理し、数多くのデータの中から瞬時にパターンを見つけ出す。ヒトは今なおコード化するのが極めて難しい抽象的な思考や高レベルの戦略策定に携わることになる。

その結果、何が起きるだろうか? フィンテックの活用により、トレーダーやアナリスト、ポートフォリオ・マネジャーが利用しているデータを統合することで、それぞれのプール内にある債券について、価格や在庫状況の比較や、一貫したフレームワークの中で新たな投資アイデアを見つけ出すための情報収集を瞬時に行うことを可能にしている。

投資家はこうした変化から、以下に挙げる7通りの恩恵を受けることができる。

1. より適切で迅速な銘柄選択  

テクノロジーを統合する第一段階は、データを集約してデジタル化することで、ますます活用の幅が拡大する人工知能(AI)を含めて、運用チームのデータへのアクセスが容易になる。クレジット・リサーチ・アナリスト達全体の分析を集約することや、すべての銘柄を同じ土俵に乗せ、明確な数値に基づいて比較するという一貫したフレームワークの中で債券を評価することにより、債券マネジャーの銘柄選択の有効性は大幅に向上するだろう。

2. より多くの売買機会の活用 

世界金融危機以降は流動性が低下しており、比較的小さなイベントが起きただけでも債券市場の流動性が枯渇する場合がある。通常の市場環境ですら、売買可能と思われた債券が瞬時に市場から姿を消したり、特定の証券への需要も一瞬のうちになくなったりしかねない。市場の流動性に関する情報を一元管理し機械とヒトの能力を組み合わせてその情報を監視することで、運用チームは誰もが欲しがる債券を購入したり、もはやポートフォリオに組み入れないことになった債券を売却したりする際に、有利な立場に立つことができる。そうした執行能力は、流動性ひっ迫時にはとりわけ重要である。

3. ベスト・プライス  

流動性がひっ迫している環境では、債券市場全体を把握可能なシステムは、投資家が必要とする債券を見つけ出すだけではなく、運用チームが貴重な時間を使ってあちこちのブローカーに価格提示を求める電話をかけずにベスト・プライスで執行することに役立つ。

4. 更なる投資アイデアを見つけ出す時間が増える    

投資プロセスの効率化がもたらす最大の恩恵の1つが有能なヒトに機械にはできないことをする時間を与えることだとすれば、次の論理的な疑問は「それは具体的にどんなことか?」ということである。

テクノロジーは、ヒトである投資マネジャーが、独自性のあるものであるかどうかに関わらず、新たなデータを見つけ出し、他のマネジャーがまだ辿り着いていない疑問を問いかける手助けをしてくれる。機械はパターンを発見し、気の遠くなるほど膨大なデータから予測を導き出すのが得意だが、インプットされたデータ以上のアウトプットはできない。より多くの情報を検討し、さらなる仮説を導き出し、自分たちの最も困難な疑問に答えるモデルを構築するのはヒトの仕事である。

5. 人と会って情報収集する時間が増える    

当然だが、すべてのデータが2進コードで提供されるわけではない。例えば地方政府や海外財務当局の幹部、あるいは企業の経営陣と会う時間が多く得られる効率的な投資プロセスを用いれば、アナリストやポートフォリオ・マネジャーは他のマネジャーとは異なる優れた投資アイデアを発掘できるかもしれない。それらは全て、超過収益を生み出す可能性を高めるものだ。

6. 顧客と対話する時間が増える     

運用チームには多くの優先課題があるかもしれないが、顧客との対話はどんな時にも最も重要な課題の1つである。顧客の優先課題は常に変化しており、そうした変化を理解することだけでなく、マネジャーの運用戦略に投資家が満足しているかどうかを理解するのはマネジャーの責任である。これは、ポートフォリオのパフォーマンス、市場イベントがポジションに与える影響、世界経済に出現するメガトレンドに対するポートフォリオのエクスポージャーなどに関する質問に、いつでも答えることを意味する。

しかし、それは一方通行ではない。顧客とマネジャーは新たな投資ソリューションを設計及び開発するため、しばしば密接に協力している。こうした創造的なパートナーシップに多くの時間を費やすことは、真の配当を支払うことにもなり得る。

7. 全体の取引コストを引き下げる     

さほど複雑ではない投資プロセスは、最終的に投資家が支払うコストを引き下げることにつながる。通常は資産が増大すれば取引コストが増大し、さらなる人員も必要となるが、テクノロジーは逆にコストを引き下げる効果がある。

投資家にとって、これらの恩恵はすべて1つの必然的な結論に結びつく。つまり、適切なテクノロジーを投資プロセスに組み入れたマネジャーは、それをためらったマネジャーをはるかにアウトパフォームできる立場に立っているということだ。こう考えてみればいい。雨が降っている時、あなたはタクシーをつかまえるためにただむなしく道端に立っているだろうか、それとも配車サービスを使うためにスマートフォンのボタンを押すだろうか?と。

 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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