米国ハイイールド債市場は新型コロナウイルスのパンデミックに伴うろうばい売り以来、力強い回復を遂げている。ただ、現在の景気回復が勢いを増すにしたがい、新たな不安が投資家のあいだに広がっている。債券利回りの上昇である。
 
利回りが上昇すると債券価格は下落することを投資家は知っている。したがって、次の利回り上昇局面を避けるために投資家はハイイールド債市場から資金を一旦引き揚げ、そうした局面が去るまで様子を見るべきなのだろうか? アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)の見解は異なる。
 
利回りに関してさまざまなシナリオを想定し、それらのもとでの投資スタンスを検討すると、ハイイールド債に投資をし続けることのメリット(そして、投資を短期的に引き上げることのデメリット)がはっきりと浮かび上がる。以下、その理由を説明する。
 

債券の鉄則: 時は金なり

債券価格は金利の動きに影響を受けるため、利回りが上昇すると投資家のリターンは短期的にマイナスに陥る場合がある。しかしながら、投資期間が数カ月よりも長いのであれば、短期的な損失はおそらくそれほど重要な問題ではない。
 
というのも、こと債券ポートフォリオに関して言えば、時間が大半の傷を癒してくれるからだ。債券はインカムゲインを提供するだけにとどまらず、債券価格は償還に向かって額面価格に近づいていく(デフォルト時を除く)。つまり、腰を据えて投資をすれば、自らのポートフォリオから支払われる元本とクーポンを、より新しい、そしてより利回りの高い債券へ再投資できるのである。こうすることで短期的な損失を相殺し、そして多くの場合、トータルリターンを増やすことができる。
 
図表1 にある4つのシナリオを検討してみよう。シナリオ1から3の「利回り低下」「利回り横ばい」「利回り上昇」シナリオでは、投資家は全投資期間にわたりハイイールド債ポートフォリオから資金を動かさない。一方、シナリオ4では、投資家は利回りが上昇する局面でハイイールド債市場には資金を振り向けず、2年後に同市場に参加する。
 
さまざまな利回り環境における各投資方針の利点と欠点.png
 
4つのシナリオの結果は意外かもしれない。理由は2つだ。
 
1つ目は、利回りが上昇する間に投資していなかった投資家は、利回りがより高い時点で市場に参加するものの、同じ利回り上昇シナリオのもと全期間にわたり全額投資をする投資家をアンダーパフォームする点である。この結果から、利回りに時間が加わったときの効果が分かる。
 
2つ目は、全期間にわたり全額投資をする投資家においては、利回りが横ばいの場合が最も高いリターンをあげる一方で、利回り上昇シナリオの方が利回り低下シナリオをアウトパフォームする点である。これは直感に反する。投資家は多くの場合、利回りが低下することを期待する。それが一段と価格を上昇させる要因だからだ。しかし、結果的に利回りが低下すると、ポートフォリオにはかえって不利に働いている。
 
それでは、ハイイールド債の投資家は、実のところは利回りの上昇を歓迎すべきなのだろうか? 必ずしもそうとは言えない。
 
すべてはタイミング次第である。同じように利回りが低下する場合でも、可能な限り保有期間の最後の方で低下することが望ましい。そうなれば企業は、より金利の低い新しい債券に借り換えることはなく、投資家のポートフォリオの利回りがむしばまれることはないだろう。反対に利回りが上昇する場合は、投資期間のより早い時期に上昇して欲しいと望むだろう。より高い再投資利回りによる恩恵をより早く受けられるからである。
 

「大きな波」がきた時は?

投資家が利回り上昇を望むべきか否かは、利回り上昇の程度にも左右される。利回り上昇幅が大きくなるにしたがい、価格下落幅は大きくなる。ABでは、ハイイールド債市場の12カ月間のリターンがマイナスになるには、同市場の利回りが1年で1%近く上昇する必要があることを導き出した。過去を振り返ると、そのように利回りが急速に上昇した事例はあまりない。
 
とはいうものの、より長い保有期間を想定して、そうした利回りの大幅上昇が仮想ポートフォリオに及ぼす影響を確かめてみたいと考えた。すると、大きな違いが生じないことが分かった(図表2)。
 
利回りの急速な大幅上昇がもたらし得る影響.png
 
大きな違いが生まれるのは、タイミングを誤った場合である。100%の自信をもってこの1年のうちに「大きな波」が来ると言えない限り、投資家は傍観者の立場を取るべきではない。その予想が外れ、シナリオ2にあるように「大きな波」が来るのにより長い時間を要したときは、痛手を被ることになる。
 
ハイイールド債は、時間の経過から得られるリターンが他のほとんどの資産クラスよりも勝っている。だからこそ、重要なのは、利回りが上昇するか否かではなく、利回りが大幅かつ急速に上昇するか否かという点である。そして、それを確実に予想できる者などいないのだから、投資家は投資し続ける方が賢明と言えるかもしれない。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
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