ついに金利が高い時代が到来した。2022年6月30日、世界の投資適格社債の実勢利回りは4.3%を超え、クレジット投資家は、債券の利回りが魅力的になる時を10年以上待ち望んでいた(以前の記事『Three Reasons It’s Time to Add High-Yield Bonds』(英語)ご参照)。他方、残念ながら、成長の鈍化と景気後退への懸念から、一部の投資家はこのセクターに手を出しかねている。アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)は、これは投資機会を逸するリスクがある状況だと考える。その理由は次のとおりだ。
 

多くの観点からバリュエーションは魅力的な水準へ

世界の投資適格社債の足元の利回りは、世界金融危機以来の高水準にある(図表1)。欧州企業の利回りは、指数構成銘柄の半分がマイナス利回りであった1年前と比較して2%以上高くなっている。現在、欧州企業社債でマイナス利回りの銘柄はない。米国の投資適格社債の利回りは、過去10年で見ると、下から13%台の低い利回り水準から、わずか数カ月の間に上位1%に入る高水準の利回りまで上昇した。
 
投資適格社債の利回りは10年ぶりの高水準.png
 

債券利回りが低かった時代、投資家は時に、成長が期待できるインカムゲイン資産として高配当の株式に目を向けた。現在では状況が逆になった。投資適格社債の利回りはS&P 500指数の配当利回りより高く、その相対優位性は過去10年で最大水準に達している(図表2)。他方、インカム獲得の上で社債はリスク資産よりもダウンサイドが小さい選択だ。
 
現在、社債は株式に対して大きな利回り優位性を持っている.png
 

現在の投資適格社債発行体は極めて強力な財務ファンダメンタルズとなっており、足元の信用スプレッドは、景気後退のリスクを織り込んでも魅力的な水準と考える。
 

強いファンダメンタルズは、景気後退に対するクッションになる

通常、景気後退に差し掛かる局面では、企業の財務ファンダメンタルズはすでに弱体化していることが多い。しかし、今回の局面はそうではない。新型コロナウイルスの流行下における長期の不確実性の高い環境で長く過ごしているため、過去の景気後退期よりも発行体ははるかに良好な財務状態にある。パンデミックに伴う不透明感により、企業は過去2年間、収益性が回復しても、バランスシートと流動性を保守的に管理してきた。その結果、レバレッジとカバレッジ・レシオ、利益率、フリーキャッシュフローが改善した。
 
これらの指標を確認するため、ABは米国投資適格社債市場について、格付けの変更、構成企業の変化、その他のゆがみを排除して過去にわたって比較可能な発行体ユニバースを構築し、徹底的な分析を行った。その結果、2020年初旬の新型コロナウイルスのパンデミック発生直前と比較して、過去12カ月間でレバレッジがどれだけ低下しカバレッジ・レシオがどれだけ上昇したかを、この「恒常的なユニバース」で示すことができた(図表3)。
 
現在のバランスシートははるかに健全である.png
 
バランスシートの相対的な健全さは、社債の発行体が圧力に耐えることができ、成長と需要の鈍化に伴う顕著な格下げサイクルには直面していないことを意味する。
 
財務の健全性に加え、企業のリスクテイクの抑制姿勢も顕著である。景気拡大期には、企業はM&Aや株主還元を強化するために負債を増やすことが多い。しかし、この場合は景気後退局面において、過剰債務や流動性不足に陥る可能性がある。他方、現在、M&Aのための借入金に対する企業側の意欲は低い。
 
企業側には投資意欲を高める動きもあるが、格付け水準を引き下げない程度になるとみている(以前の記事『成長鈍化の今なぜ社債か?』ご参照)。今後1 年間に企業の財務政策はより積極的になる可能性が高いものの、ほぼすべての投資適格業種において、信用プロファイルの改善が悪化を上回ると予想している。これは最近の格付け動向でも示されており、2022年上半期には格上げ数が格下げ数を2 対1 以上で上回った。
 

需給要因は改善

今日、債券需給の材料は金融見通しの材料としてはあまり取り上げられない。しかし、ABの分析では、中央銀行の資産売却に関する懸念の高まりは杞憂に終わる可能性がある。米連邦準備制度理事会(FRB)は米国の投資適格社債市場において主要な保有主体ではないため、量的緩和の縮小に伴い、保有債券の売却が市場に影響を与えることはないだろう。
 
一方、欧州中央銀行(ECB)が投資適格社債のポートフォリオを整理すれば、欧州クレジット市場を席巻する可能性がある。しかし、それは現実的なシナリオだろうか? ABはそうは考えない。2018年、中央銀行は国債購入プログラムを不用意に終了させてしまい、すぐに購入再開に追い込まれた。ECBは同じシナリオを繰り返したくないだろうし、欧州経済が成長鈍化圧力にある中で市場を混乱させることも望まないだろう。その代わり、ECBは投資適格社債を保有し、さらには元利金を投資適格クレジット市場に再投資し、欧州のクレジット・セクターの安定を維持しようとすると考える。
 
それでは需要サイドはどうだろうか。多くの投資家は依然としてアセット・アロケーションには様子見姿勢にあるが、これまでは歴史的な低利回りを理由に長年にわたり債券を資産配分の中でアンダーウェイトしてきた。今日の大きく改善したな利回り環境に誘われて、投資家が投資適格社債市場に戻ってくるのが自然な流れだと考えている。そうなれば、社債セクターは上昇に転じる。実際、社債のフローはすでに安定化しており、反転の瀬戸際にある可能性もある。
 

さまざまな条件が揃っている

つまり、景気後退の可能性があるとしても、世界の投資適格社債には非常に有利な兆しがある。バリュエーションは魅力的である。バランスシートは健全で、フリーキャッシュフローは拡大し、収益性は向上しており、企業は比較的保守的な財務方針を維持している。景気減速に向かう中でもファンダメンタルズはかつてないほど強固なものとなっている。需給関係も良好である。
 
クレジット投資家はこうしたシグナルに耳を傾け、行動を起こすべきと考える。投資適格社債に投資する絶好のタイミングが訪れている。
 

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。
オリジナルの英語版はこちら

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2022年8月2日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

「債券」カテゴリーの最新記事

「債券」カテゴリーでよく読まれている記事

「債券」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。