中国共産党大会は長期目線のロードマップを策定

第20回中国共産党大会(党大会)が閉幕した。党大会は、5年に1度開催され、中国の政治カレンダーでは最も注目度の高いイベントであるが、注目すべきはその象徴的な位置づけだ。まず、今回の党大会は、中国共産党が創立100周年を迎えた2021年以降で初の党大会となる。そして、その党大会で習近平国家主席が前例のない3期目を確実にした。
 
世界では反グローバル化の強まりの背景として民主主義の後退が指摘されるが、中国は長期政権を固めるステップを踏み、今後も独自戦略を続けていくことが確実になった。
 

政策決定がもたらす長期的効果は大きい

その中国の道筋は、まずは政府上層部の要人人事に始まり、具体的な政策を通じて今後明らかになっていくが、長期の構造的政策はこの党大会で合意された格好になる。例えば、外交戦略における独自路線、消費主導型の経済成長モデルへの移行、経済成長至上主義を脱却し「共同富裕」への傾倒を強めるといったものがそれにあたる。中国は、2001年12月に世界貿易機関(WTO)へ加盟を果たしてから20年のうちに、世界経済のバリューチェーンにおいて大きな役割を果たすと共に、自らの国内総生産(GDP)規模を10倍増することに成功した。これは国際的にも国内的にも類を見ない大きな成功に他ならないが、そのモデルを修正するという意思決定を着実に進めている。
 
事態が中国と世界との「分断」や「対立」へエスカレートしていかないことを切に願う一方で、世界の歴史の中では複数の政治経済システムが覇を競う姿はむしろ通常の状態ともいえる。この大きなレジームには人類の科学技術や経済発展の新たな活力をもたらす可能性も指摘されるだろう。
 

分散効果は短期的に強まる見込み

投資の観点からは、中国は巨大な経済規模であるだけに、分散投資には重要なパーツとなる。特に、インフレやパンデミックなど、世界をまたぐイベントが金融市場を揺るがす局面では、政策動向が一様になりがちであるため、その独自性は際立ちやすい。例えば、中国は2022年に金融引き締めをせず、逆に金融緩和を進めた数少ない国の1つだ。この一事をとっても、投資家にとっての中国は国際投資における分散効果をもたらす可能性を秘める対象と言える。
 
そして、2023年にかけてはどうだろうか?
 
世界経済が2023年に期待するコンテクストは、利上げ一色だった2022年からの反動であるが、金融政策が実体経済に影響を及ぼすのにはラグがあるため、そうした反動は「不況下の金融市場の反発」という矛盾を抱えたストーリーだ。その局面にあって、党大会を通過した中国は実体経済への働きかけを強める可能性が高いとアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ではみている。新たに昇進した地方の政治家は、自らの実績を高めていくことに意欲的な姿勢をとり、投資や経済活動を後押しする傾向があるからだ(図表1)。
 
 
 
中国の政治サイクルはビジネス・サイクルに影響を与える.png
 
 

 

2023年には財政政策の独自性が発揮されるか?

もう1つ注目しているのは、これまで積極的な政策対応を見送ってきた分野だ。
 
まずは、経済成長を犠牲にしても堅持してきたゼロ・コロナ政策だが、これには時間がかかりそうだ。この政策には高齢者層のワクチン接種率が低いことが背景にあり(60歳超で3回目の接種を受けた人は約67%に達したが、80歳超では38%にとどまる)、接種数が加速することが政策緩和の前提条件になりそうだ。
 
他方、不動産セクターについてはより積極的な対処姿勢が打ち出される可能性がある。これは、不動産セクターそのもののてこ入れというより、中国経済に及ぼす下押し効果を低減するためだ。図表2に示すとおり、中国では設備投資回復の兆しが出始めているタイミングにあり、低迷が続く不動産セクターの設備投資の底入れに政策が貢献しそうだ。
 
 
中国:不動産投資が低迷する中、インフラ投資は拡大.png
 
 
 
 
英国ではトラス政権が財政負担を懸念されて市場に退場を命じられた格好になり、かようにインフレと景気のバランスは困難を極める政策判断となっている。この点でも中国は政策面の「分散」をもたらす対象である可能性がある。
 
このように、第20回中国共産党大会が示唆するものは、長期、短期にわたって大きいものがあり、それらは投資家にとって必ずしもマイナスなものばかりではない。
 
中国は経済や科学技術の面で類を見ない大国であり、強い求心力を持つ政治運営を続けている。貿易や産業で西欧社会とのつながりは深いだけに、「分断」と「分散」の判断をどのように下していくのかは、金融市場にとって大きな課題であり続けるだろう。
 


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当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成した 「What to Expect from China’s 20th Party Congress」及び 「Can China Revive Economic Growth Post-Congress?」をアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳し、2022年10月24日現在の情報を基に加筆・編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

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