最初に前編(以前の記事『人生100年時代に備えて:長生きリスクと資産運用の関係(前編)』ご参照)の話を少し異なる表現でまとめると、老後の資産管理において、結局は何らかのリスクにさらされるということだ。債券100%であれば、市場変動リスクは低いかもしれないが、長生きリスクは大きくなる。一方、株式100%にすれば、資産が大きく増えることで長生きリスクを低減させることはできるが、市場変動リスクは大きくなってしまう。

つまり、自分自身がどちらのリスクをより受け入れやすいのか(どちらを受け入れたくないのか)を考えることが最初の一歩になるといえるだろう。仮に資産が底を突いたとしても、公的年金等で細々と生活していけばよいと割り切れる人は、長生きリスクへの許容度が高いといえるだろう。逆に、80歳、90歳になり、介護や入院等で医療費がかさむ中、子供に迷惑をかけたくない、と思っている人は、長生きリスクへの許容度は低く、市場リスクをとってしっかりと資産を増やしていくことが望ましいと整理できる。

株式と債券を組み合わせる  

「結局は何らかのリスクにさらされる」と言ってしまうと当たり前のように聞こえるかも知れないが、この当たり前な結果を本当に理解している人はどのくらいいるだろうか? 理解している人は少なくないかもしれないが、理解してその対策を実行している人は果たしてどのくらいいるのだろうか? 多くの日本人においては、依然として資産運用に対する恐怖心、または煩わしさから預貯金がほとんどとなっている人が多いのが実態だ。これは、前編の債券100%の場合に近く、長期では長生きリスクにさらされることになる。逆に、退職金で大きな資産ができたのをいいことに、個別銘柄やテーマ株投信などで積極的に運用している人もいるだろう。この場合は前編の株式100%のケースに近く、老後の人生プランが市場に大きく左右されることになり、想定よりも大幅に早く資産が底をつくことも起こり得るのだ。
つまり、前編で述べたように、株式100%も債券100%も、長生きリスクへのソリューションにはならないのだ。
では何がソリューションなのだろうか? これまでの結果は、より受け入れ易い結果を得る手法のひとつが、株式と債券を組み合わせることだと示唆している。
ここでは、単純に株式と債券に50%ずつ投資した場合のシミュレーションを実施してみた。すると、80歳までの資産残存確率は96.6%、90歳は48.7%、そして100歳は18.7%となった(図表1)。株式100%と比べると、債券が入ったことで老後前半の確実性が上がる一方、老後後半の資産残存確率は低下してしまうが、100歳までの生存確率(女性で7.2%)よりは100歳までの資産残存確率(18.7%)のほうが高く、リーズナブルだと考えられる。

資産配分を株式50%と債券50%にした場合の資産残存確率.png

バランス型投信はソリューションになり得る

これら一連のシミュレーション結果から、株式と債券の組み合わせがソリューションになりそうだということが明らかになったと思う。ここでは例示のために株式と債券に50%ずつ投資するシンプルなケースを考えたが、今後は老後に適した資産配分はどのようなものか、という議論が盛んになってくるだろう。老後は加齢に伴って認知力が徐々に下がり、複雑な意思決定が行いづらくなるため、最適な資産配分を実行する手段として、バランス型投信やラップ口座といった、ある程度専門家に任せるタイプの運用商品が高齢者にとってのソリューションになる可能性は高い。中でも、加齢に伴い、投資期間が短くなるため、時間の経過にあわせて自動的に市場変動リスクを落としていくターゲット・イヤー型ファンドなども、老後に向けた適切な運用商品と言えるだろう。
「人生100年時代」を自分事として捉えなければいけない今、株式だけ、債券だけ、ではなく組み合わせをしっかりと考え、それを実行していただきたい。
 

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