人々の寿命が延びるのに伴い、退職後の収入も長持ちさせる必要が生じる。現在、確定拠出年金(DC)プランのスポンサーは、多くの加入者に対して退職後に十分な給付をもたらすソリューションを提供しよう考えているが、それに向けた動きは十分には進んでいない。そのようなソリューションがない状況では、たとえDCプラン加入者が長年にわたって安定的に資金を拠出し、賢明な資産配分を維持していたとしても、退職が近づいた時期にタイミング悪く市場の下落や金利変動に見舞われれば、大きな痛手を被りかねない。

しかし、これらの落とし穴を避けるには効果的な方法がある。それは、退職を控えた一時期に、貯蓄の大部分で給付保証型商品を購入するのではなく 、在職中に早い段階から、ルールに則って、同商品を購入することが手始めとなる。

時間の助けを借りてリスクを回避する(または受け入れる)

市場や金利の動きを予測することはできないが、計画を立て、不確実性に備えて資産を守ることはできる。具体的には、将来の給付額の変動を最小限に抑えることであり、そのためには給付保証型の商品を少しずつ購入していくことが重要である。

退職前から(理想的には退職の10~15年前から)給付保証型商品を安定的に購入することには、3つの重要なメリットがある。まず、少しずつ保険を購入し給付を確定することで徐々に給付水準を高めることが可能になり、退職時の市場環境(特に悪い環境)に影響されずにすむようになる。2つ目は、市場の下落に対するプロテクションがある(既に給付額が確定している)ことで、多くの投資家が株式保有を縮小しようとする退職間近の時期に、株式を増やすことで更なる成長を目指すことが可能になる。最後に、退職のかなり前から、プラン加入者にリアルタイムのフィードバックを提供することで、加入者が計画を立てたり調整を行う時間を確保できることになる。

退職後資産の形成においては、退職直前に口座残高が目減りする収益率配列のリスクもある。給付保証型商品によって給付が確保されていなければ、収益率配列のリスクは退職直前の瞬間に大きくなり、退職直前の重要な時期に市場環境が悪ければ、給付保証型商品を購入するための資金が少なくなってしまう。

退職直前の瞬間に、世界金融危機(リーマンショック)や最近の新型コロナウイルス感染拡大などの象徴的な市場の下落局面にさらされた投資家は、とりわけ大きな打撃を受けた。市場の下落に伴って退職貯蓄の価値が減少した結果、プラン加入者の購買力が大幅に低下したことに加え、年金化するための保証利率も低下し、生涯にわたる保証付き給付額も減少することになった(図表1)。

好ましくない市場環境は退職所得の変動につながる可能性.png

金利のタイミングを図るゲームは避けよう

金利は誰にとっても給付を計算する上でカギを握る要因だが、それを予測するのは極めて難しい。給付保証型商品を異なる金利環境下で計画的に購入すれば、一度限りの購入で被りがちな金利低下リスク(給付の減少)を回避することができる。給付の保証利率の低下に資産価格の下落が重なれば、そのリスクは著しく大きなものとなる。

給付保証型商品をルールに則って購入することは、異なる価格で時間をかけて少しずつ購入するドルコスト平均法に似ている。退職所得の場合、プラン加入者は保険会社が保証する給付保証型商品を時間をかけてその時々の金利水準で購入することになる。このメリットは、ある一時点の金利ではなく、累積ベースの金利に基づいて生涯にわたる給付が得られることにある(図表2)。

時間をかけて計画的に購入すれば、金利が変動しても収入の安定性が高まる.png

「着実な準備」も信頼性を高める

市場や金利に伴う逆風から退職後の収入を守ることを検討することは初めの一歩としては良いことだが、そのために保険会社 が保証する商品を購入することにも本質的にメリットがある。

例えば、時間をかけて給付保証型商品を購入すれば、信頼性や自信を手に入れることができる(以前の記事『退職後の「貯蓄」から「年金」へ』ご参照)。また感情に基づくバイアスも払拭されるように見える。例えば、収入のうち 年5%のペースで給付保証型ソリューションを少しずつ購入することは、65歳で残高を全額引き出して年金化することに比べ、心理的にも経済的にも実行可能だと感じるかもしれない。

購入プロセスが、プラン加入者が利用している他のプログラムと似ていることもプラス効果をもたらす。多くの加入者はDCプランでの積立投資を頼りにしており、退職が近づくにつれてターゲット・デート・ポートフォリオがリスクを徐々に低下させることについても理解し任せている。給付保証型ソリューション、特にイン・プラン型QDIA(掛金が自動的に投資される適格デフォルト商品)として提供されるサービスは、本質的に長年にわたる実績を持つこれらの貯蓄方法と整合性がある。

退職後に不安のない生活を送るためには、生涯にわたり保証された給付を確保する方法を検討することが重要である。現役時代にその方法を入念に計画することは、なおのこと賢明なことと言える。なぜなら、それは退職間際や退職時における市場の低迷や、長生きした場合などのテールリスクに対処する手段になるからである。まずは、この手の給付保証商品を活用し、これらの問題をコントロールすることで、死亡時に退職口座の価値を維持したり、市場の上昇による恩恵を享受したりするなど、大きな影響を及ぼす他の問題にも取り組むことが可能になる。

当資料は、アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーのCONTEXTブログを日本語訳したものです。オリジナルの英語版はこちら。

本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」)ポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。

当資料は、2021年5月21日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーが作成したものをアライアンス・バーンスタイン株式会社が翻訳した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。アライアンス・バーンスタイン及びABはアライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。

当資料についてのご意見、コメント、お問い合せ等はjpmarcom@alliancebernstein.comまでお寄せください。

「個人の資産運用」カテゴリーの最新記事

「個人の資産運用」カテゴリーでよく読まれている記事

「個人の資産運用」カテゴリー 一覧へ

アライアンス・バーンスタインの運用サービス

アライアンス・バーンスタイン株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第303号
https://www.alliancebernstein.co.jp/

加入協会
一般社団法人投資信託協会
一般社団法人日本投資顧問業協会
日本証券業協会
一般社団法人第二種金融商品取引業協会

当資料についての重要情報

当資料は、投資判断のご参考となる情報提供を目的としており勧誘を目的としたものではありません。特定の投資信託の取得をご希望の場合には、販売会社において投資信託説明書(交付目論見書)をお渡ししますので、必ず詳細をご確認のうえ、投資に関する最終決定はご自身で判断なさるようお願いします。以下の内容は、投資信託をお申込みされる際に、投資家の皆様に、ご確認いただきたい事項としてお知らせするものです。

投資信託のリスクについて

アライアンス・バーンスタイン株式会社の設定・運用する投資信託は、株式・債券等の値動きのある金融商品等に投資します(外貨建資産には為替変動リスクもあります。)ので、基準価額は変動し、投資元本を割り込むことがあります。したがって、元金が保証されているものではありません。投資信託の運用による損益は、全て投資者の皆様に帰属します。投資信託は預貯金と異なります。リスクの要因については、各投資信託が投資する金融商品等により異なりますので、お申込みにあたっては、各投資信託の投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等をご覧ください。

お客様にご負担いただく費用

投資信託のご購入時や運用期間中には以下の費用がかかります

  • 申込時に直接ご負担いただく費用…申込手数料 上限3.3%(税抜3.0%)です。
  • 換金時に直接ご負担いただく費用…信託財産留保金 上限0.5%です。
  • 保有期間に間接的にご負担いただく費用…信託報酬 上限2.068%(税抜1.880%)です。

その他費用:上記以外に保有期間に応じてご負担いただく費用があります。投資信託説明書(交付目論見書)、契約締結前交付書面等でご確認ください。

上記に記載しているリスクや費用項目につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきましては、アライアンス・バーンスタイン株式会社が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用における最高の料率を記載しております。

ご注意

アライアンス・バーンスタイン株式会社の運用戦略や商品は、値動きのある金融商品等を投資対象として運用を行いますので、運用ポートフォリオの運用実績は、組入れられた金融商品等の値動きの変化による影響を受けます。また、金融商品取引業者等と取引を行うため、その業務または財産の状況の変化による影響も受けます。デリバティブ取引を行う場合は、これらの影響により保証金を超過する損失が発生する可能性があります。資産の価値の減少を含むリスクはお客様に帰属します。したがって、元金および利回りのいずれも保証されているものではありません。運用戦略や商品によって投資対象資産の種類や投資制限、取引市場、投資対象国等が異なることから、リスクの内容や性質が異なります。また、ご投資に伴う運用報酬や保有期間中に間接的にご負担いただく費用、その他費用等及びその合計額も異なりますので、その金額をあらかじめ表示することができません。上記の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。