シャープレシオとは
「リスクに見合うリターンが上がっているか」という、投資効率の良さを数値化したのがシャープ・レシオです。個別の株や債券、投資信託など、金融投資商品同士を比較する際に使われる、代表的な指標のひとつとなっています。この数値が大きいほど、小さなリスクで大きな投資リターンを上げたことを意味します。
一定期間の投資結果は、元本に対して何%のリターンが得られたのかでも測ることができます。しかし、単なるリターンの比較では、投資家が選択しているリスクが考慮されていません。
例えば、投資信託A、Bともに、年平均リターンが5%だったとしても、Aはリスクの大きい商品、Bはリスクの小さい商品であれば、Bのほうが効率の良い投資結果といえます。
シャープ・レシオは、そのような投資効率の良し悪しを比較するため、「リスクを冒して運用した結果、無リスクから得られるリターンを、どのぐらい上回ったか」を数値で表しているのです。この数値が大きいほど、小さなリスクで大きな投資リターンを上げたことを意味します。
シャープ・レシオの計算方法
シャープ・レシオは、「これから投資しようとしている金融商品が、過去にどのようなリスク対比で動いてきたのか」を見るために使われます。
金融商品を販売している会社のウェブサイトなどでシャープ・レシオを調べることができ、次のような計算式に基づいて算出されています。
対象期間のシャープ・レシオ=(リターン-無リスク利子率)÷リスク
リターンとは、対象期間の年率平均リターンのこと。
無リスク利子率とは、「リスクを冒さなくても手に入るリターン」のことで、リスクのない金融商品を買ったときの利子率となります。3ヵ月国債の金利などが使われるのが一般的で、日本の場合は、現在は0%として計算されます。
例えば、直近5年間の年率平均リターンが10%だったのファンドAとB(ともに日本円建て)があるとして、ファンドAはリスクが5%、Bは8%だとすると、それぞれのシャープ・レシオは、次のようになります。
Aのシャープ・レシオ=(10-0)÷5=2
Bのシャープ・レシオ=(10-0)÷8=1.25
シャープ・レシオの使い方と注意点
シャープ・レシオは、次のように投資で活かすことができます。また、注意点にも気を付けましょう。
同じアセットクラスの比較に使う
シャープ・レシオは、基本的には「日本株」同士など、同じアセットクラス(カテゴリ)の商品比較に役立つものです。
例えば、リスクの高い「日本株」とリスクの低い「日本債券」を比較した場合、日本株のシャープ・レシオが高くても、そもそもリスクを冒したくない投資家にとっては日本株への投資は選択肢にないでしょう。
違う通貨建ての商品比較に使ってはいけない
シャープ・レシオは、同じ通貨建ての商品比較に使います。シャープ・レシオの計算で使われる「無リスク利子率」は、日本なら約0%ですが、アメリカでは約2.4%(米国国債3ヵ月金利)と、通貨ごとに異なります。また、通貨が異なる場合は為替変動による影響も評価しなければなりません。ですから、通貨が異なる商品でシャープ・レシオを比較する場合は、リターンを同じ通貨に換算して計算する必要があります。
同じ期間の比較に使う
シャープ・レシオを比較する場合、必ず同じ期間のデータを使います。シャープ・レシオは、一定の期間に紐付くため、異なる期間を比較してもあまり意味がありません。例えば、ファンドAは2008年のリーマンショックを含む、ファンドBはリーマンショックを含まないでは、単純に運用成績を比較できないからです。
ポートフォリオを決める際にも活用できる
前述したように、シャープ・レシオは、基本的には同一アセットの商品を比較するために使います。しかし、分散投資をする場合は別です。仮に株式100%ではリターンは高いがリスクが高すぎるという場合、「どのアセットにどれぐらい投資するか」を決める際にも利用できます。
例えば、株と債券を組み合わせて投資する場合に、シャープ・レシオ、リスク、リターンの数字を見て、何%ずつ保有すればいいのか、配分を決める際に活用します。
未来を保証するものではない
シャープ・レシオは、過去の一定期間に紐付くものなので、過去の数値が良かったからといって、未来も良い数値になるとは言い切れません。将来も同じようなリターンが望めるかどうかは、別に見定める必要があります。
自分に合った投資商品かどうかは判断できない
シャープ・レシオは、投資商品選びの判断基準のひとつです。しかし、自分に合った商品アセットかは、この指標だけではわかりません。
例えば、日本国債や米国国債のシャープ・レシオが高かった時期がありましたが、それはリターンが良かったからではなく、リスクがあまりに小さかったからです。この場合、リスクをとって高いリターンを狙いたい投資家向きの投資商品とはいえません。
シャープ・レシオ、自分のとれるリスク、希望するリターンを同時に考えていくことが重要となります。